2020年の東京五輪で指揮を執る森保一監督(49)が、初陣を勝利で飾れなかった。U-20(20歳以下)日本を率いて開催国のU-23タイと対戦し、1-2で敗戦。0-1の後半7分にMF神谷優太(20=湘南)が森保ジャパン初ゴールを挙げたが、同19分に決勝点を奪われた。広島を3度のJ1制覇に導いた3-6-1システムを代表で初披露したが、浸透は先。異例の試合当日練習も行って迎えた初戦は黒星となった。

 

 森保監督が、海外から東京五輪への第1歩を踏み出した。2万546人が詰めかけた地元タイ相手の完全アウェー戦。押し込まれた序盤から何度もサイドラインに歩を進め、大声で指示し、味方には拍手、自軍ファウルには両手を広げて熱く抗議した。広島時代のスーツと違うポロシャツにジャージー姿。船出を勝利では祝えなかったが「選手たちが新しい戦術に最後までトライしてくれたので、私は適度な緊張感の中で初戦を迎えられた。次につながる」と前向きにとらえた。

 

 初陣は、後半に激しく動いた。4分に初失点。3分後に追いついた。初代の10番とゲーム主将を託したMF神谷が左足でミドルシュート。ゴール右隅に決まると、森保監督は喜ぶ選手を尻目に、指笛で別の選手を呼び修正の指示を授けて引き締めた。19分には2失点目。勝ちにいった初交代は25分。FW旗手に代えてMF宮崎を投入と遅めのアクションだったが、中1日の11日北朝鮮戦を見据えた。

 

 敗れはしたが、いきなり完璧は求めていない。幅広い発掘のため、5月のU-20W杯韓国大会に出場した東京世代の主力を1人も呼ばず、大学生5人を含む無名の有望株を集めた。「この世代には結果も成長も求める」。指導4日目。試合前日8日に午前午後とも練習し、この日も異例の試合当日練習を敢行。先発11人を含む全員で攻守のセットプレーを確認したが、1失点目はそのセットプレーからGK大迫にミスが出た。

 

 2失点目も、警戒させていた「予測」が足りなかった。それでもまだ初戦。難解な3-6-1システムが一朝一夕で機能するわけがない。一方で前日練習の最後に試した4-4-2にも挑戦と、柔軟性をうかがった中で後半は内容が上向いた。今後も刺激を与え、たとえ敗れても東京世代を成長させていく。【木下淳】