森保には専属ともいえる理容師がいる。これまで茶髪など派手な髪形にしたことはなく、明らかに地味なイメージが強い。それでも人一倍のこだわりがある。担当は広島市で「ヘアサロンOKIMOTO」を経営する沖本静夫だ。Jリーグ・サンフレッチェ広島の前身マツダ時代、森保が20歳の頃から通い詰めて約30年の付き合いになる。

 森保の髪形について、沖本は「昔はサイドを刈り上げて、前髪にパーマをあてていた。プレー中に邪魔にならないのが彼のオーダーだった」。少し変化が訪れたのはJリーグ元年の93年頃。森保の長男で当時2歳だった翔平を初めて沖本がカットした時のことだ。

 お坊ちゃんスタイルの息子を見て、森保は「僕もこの髪形がいい!」と要望。「伸びても気にならないし、プレー中に髪を触ることもない」(沖本)という超シンプルなイメチェンだった。周囲の選手から「なぜ森保さんの髪形は変わらないの?」と質問されることもあるスタイルを、25年間も維持し続けている。

 1度決めたらこだわり抜く。広島から京都サンガFCに移籍した際も1カ月に1度、沖本が車を走らせ、京都・城陽市まで散髪に行った。「真面目な性格で、サッカーのことを一番に考えて髪形も決める。相手の気持ちを考える人だから、訪問の度に必ず京都の観光案内をしてくれた」。

 沖本と妻玲子(71)のことを「おっちゃん、おばちゃん」と呼び、現役時代には定期的に森保家でバーベキュー大会を開催。沖本夫妻だけでなく、広島の後輩選手らの家族を招き、意思疎通を図った。「面倒見が良くて本当に優しい」と玲子はうなずく。こだわりの髪形には、森保の人柄と温かい人間模様が凝縮されている。(敬称略)【小杉舞】