<国際親善試合:日本4-3ウルグアイ>◇16日◇埼玉

「東京オリンピック(五輪)世代のエース」。MF堂安律にずっとついてきたこの枕ことばはもう不要だ。20歳の1発を見て息をのんだ。トップスピードで裏に抜け、トラップだけでDFをかわしてシュート位置にボールを置いたところで勝負はあった。動きだしから左足を振り抜くまで、約2秒。迷いはなかった。しかも置き去りにしたのは、スペインの強豪アトレチコ・マドリードで主力を張るゴディンだった。

試合後、堂安の口から「ゴディン」のワードは1度も出なかった。世界の猛者に仕掛けたというより、相手が誰かすら気にも留めなかったように映った。技術以上に、その強気で肝の太いスタンスに、A代表の中核を担う可能性を感じた。

堂安のシュートがネットを揺らすのを見て、真夏のジャカルタで聞いた言葉が脳裏によみがえった。「五輪経由でA代表、という考えは捨ててほしい。A代表に入るような選手が、東京五輪に出場してほしい」。8月のアジア大会中、東京五輪世代のU-21日本代表を兼任で率いた森保監督が口にした。トップカテゴリーであるA代表から五輪代表へ“逆輸入”できるくらいの若手が出てきてほしい-。あの1発は兼任監督の願いにかなうものだった。

東京五輪世代として臨んだ昨年5月のU-20ワールドカップ(W杯)韓国大会でも、堂安はチーム全4得点のうち3得点を挙げた。ただチームはベスト16で敗退し、突き抜けた印象は残せなかった。

あれから約1年半。世代の間で抜きんでた。U-20W杯に飛び級で参加したFW久保建英(17=横浜F・マリノス)は今、U-19日本代表として海外遠征に参加している。堂安のゴールを見て、何を思うだろう。久保に限らず、若い世代全体に何か急激なうねりが起きるような予感すらする。堂安は「紙に数字がついただけ」と言った。公式記録に無機的に記された「1」がもたらすものは、2年後の五輪、そして4年後のW杯カタール大会が終わるまで計り知れない。

日本サッカーの顔だった存在の記憶は、いつも鮮やかなゴールとともにある。MF中田英寿がローマ時代にユベントス相手に決めたミドルシュート。MF中村俊輔はセルティック時代、マンチェスター・ユナイテッド戦で直接FKを右上隅へ沈めた。FW本田圭佑は、W杯出場が懸かったオーストラリア戦の後半ロスタイムにPKをゴールど真ん中に蹴り込んだ。

堂安のゴールにも心を動かされた。もう1本-。次は強敵相手か、大きなプレッシャーがかかる場面か、それは分からない。ただ、そんなシーンに堂安はきっとまた出会うだろう。ゴディンには1度勝った。衝撃的だった初弾に続き、世界基準の相手と再びマッチアップして決める1発こそ、堂安律の立ち位置を不動にすると確信している。【岡崎悠利】