ボールの落下位置をピタリと当てた。日本は前半20分、CKを獲得。前線に上がった冨安は相手と駆け引きした。キッカーはMF柴崎。1度は中へ入りマークを外すと、ふわりと浮いた球を目掛けてファーサイドで頭を合わせた。ピンポイントのヘディングシュートが決まり先制。前日20日、念入りに練習したセットプレーで国際Aマッチ6試合目で初ゴールを挙げた。

「練習から何度もいいボールを蹴ってくれていた。押し込まれている展開の中でのCKだったので、取れればいいなと。取れて良かった」

Jリーグ発足以降、DFでは内田の記録を塗り替えて最年少ゴールで、アジア杯の最年少ゴールでも堂安の記録を更新した。

値千金の得点だけでなく、本職の守備でも見せた。スピードある相手FWムワラドをしつこくマーク。「(相手は)常に(DFの)裏を狙っていたけど、先に先に対応することを意識したし、予測して動きだすことができた」。防戦一方だったが、結果は無失点。東京オリンピック(五輪)世代の星が、初の国際大会で確かな成長の跡を残した。

意味ある1発だった。188センチの長身もヘディングが苦手。「あまりジャンプのタイミングが合わない。空間認知もあまりない」。昨年1月にベルギー1部シントトロイデンに移籍後はヘディング練習で毎日居残った。はじくことができても攻撃で生かせないのが課題。冨安でさえ見上げる190センチ台の相手に競り負けないよう何度も何度も跳んだ。その後は1人で筋トレ室に直行。公称78キロも80キロ台まで体重を増やし屈強な肉体に鍛え上げた。積み重ねてきた努力。大舞台で実らせ「素直にうれしかった」と顔をほころばせた。

厳しい戦いが続く一発勝負の決勝トーナメント。2大会ぶり5度目の優勝へ、ベトナムとの準々決勝へ駒を進めた。「しっかりみんなで体張ってゼロで守ることが出来たのは大きな意味がある。でもまだ優勝したわけじゃないし、また反省していい準備をしたい」。自信を深めた次世代のDFリーダー。目指す場所まで20歳が攻守で引っ張っていく。【小杉舞】