サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会が11月20日に開幕する。7大会連続7度目出場の日本は、1次リーグE組。優勝経験のあるドイツ、スペインと同じ厳しい組に入った。
11月23日の日本の初戦、ドイツ戦まで1カ月。日本は16年ぶりに、本田圭佑(36)のいないW杯を迎えようとしている。
2010年南アフリカ大会からずっと主役。本田は、4年に1度の祭典に、3大会連続で日本代表の顔として君臨してきた。
「W杯優勝」を公言しチームをけん引したが、森保ジャパンが目指す8強にさえ届かず、18年ロシア大会で日本代表から退くことを決め、以来、選手として世界各国でプレー。選手でありながら、縁あって、カンボジアの実質的な代表監督を務めている。
日本のサッカー史上最もW杯を愛し、W杯に愛された男はいま、何を思うのか-。
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「2018年に代表を退いてから、ちょっと考える時間はあったものの、わりとスムーズに、やっぱり自分が成し遂げたいモノは、ワールドカップ(以下W杯)で優勝することって、すぐに整理はついた。イコール指導者の道。ここ(カンボジア代表)で監督業をやってくうちに、すんなり、これ(=監督)でW杯優勝を目指したいと思うようになった」
今も変わらず、W杯優勝を目指しているという。現役選手として監督を続けながら、指導者として、世界の頂点を思い描く。
「代表監督がまず、ものすごく面白かった。まあ、勝てないけどね(苦笑い)。国の一体感、一体となってチームを応援してくれるという、自分の好きな刺激を最初の1年で得られた。すごく性に合ってるなと、まず思ってます、と。
もう、一点突破。クラブの監督にはまったく興味がないし、W杯優勝にしか興味がない。だから、チャンピオンズリーグに監督で出たいとか、ヨーロッパのクラブを率いたいとかは、全くない」
ずっと「サッカー=W杯」だった。幼少期、父が与えてくれたビデオテープが運命を決めた。W杯に4度出て王国を3度優勝に導いたブラジル代表のペレに魅了された。
W杯は出るものではなく、優勝するもの。そうすり込まれて育ち、自らすり込んで大きくなった。3度出てはね返されても、その思いは変わらない。
本田はペレではない。日本もブラジルではない。優勝どころか、8強にさえ1度も勝ち上がることができないでいる。
「W杯優勝」は大風呂敷を広げ、夢を語っただけ、そんな声がある。だが、今もブレない。現役選手のまま、今回は監督目線でW杯を迎える。
カタールには、W杯全試合を生中継するインターネットテレビ局、ABEMAの「GM」という立場で滞在することになる。
「(優勝を)目指してる、って点でいえば、ずっと目指してる。(すでに代表を退いており、今回)選ばれる、選ばれないの現実感は置いといて、カタールで解説もするし、日本代表も応援する。ポジションがちょっとだけ蚊帳の外やけど、でも、そのポジションからも、高校(1年)の時に、2002年の日韓W杯で、いつかオレはここに出て活躍したる、って思っていた時と同じ。そういう視点で見る」
時に過激すぎる本田の言葉は、まっすぐだ。そこに狙いはあるが、忖度(そんたく)はない。これまで、まわりに熱を生み出し、良くも悪くも、日本代表のエネルギーとなってきた。
ああだこうだ、と言うが、言葉や考えで後輩たちを一方的に縛り付けるようなことはない。
そんなエネルギー、強い思いは、一種の熱病のようでもあった。
あのエネルギーが、一過性のもので終わってしまっては、もったいない。指揮官を筆頭に、極めてエネルギー不足に陥っているようにうつる森保ジャパンにこそ、必要な“劇薬”に思えるからだ。
伝える、受け継ぐ。
その視点で後輩たちを、どうみているのか-。
【八反誠】(<2>につづく)
◆本田のW杯 10年南アフリカ大会から3大会連続で出場し、通算10試合4得点。全ての大会でゴールを決め、通算4得点は日本歴代最多。2位は2得点でMF稲本、FW岡崎、MF乾の3人。また、本田はアシストも3大会連続でマークしており、3大会連続で得点とアシストをそろえたのは、アシストの記録が残る66年イングランド大会以降ではイングランド代表MFベッカム、オランダ代表FWロッベンらに次いで6人目の快記録だった。
◆本田と監督 カンボジア連盟との契約は23年まで。18年8月に結んだ契約を21年3月に2年延長。23年5月の自国開催の大舞台、東南アジア大会がひとつの区切りとなりそうだ。本田は指導者ライセンスを取得していないため、保持者がチームに必要。現在は高校サッカーの名門・帝京高の元監督で、日本協会公認のS級ライセンスを持つ広瀬龍氏が監督として本田とともにベンチ入りしている。
◆W杯優勝監督 前回18年ロシア大会を制したフランスのデシャン監督まで、過去優勝した21チームは全てその国出身の監督が率いている。W杯優勝監督は4年に1人だけ。34、38年大会を連覇したイタリアはポッゾ監督が率いており、過去20人しかいない。
○…本田は12日にSNSで「膝の手術を受けました。すぐに復帰します。(今後も)できる限り長くプレーしたい」と報告した。インスタグラムには車いすにのった写真、松葉づえを使って歩く写真などをアップ。この膝のけがもあって、昨年11月4日のスドゥバ(リトアニア)でのAリーグ、ザルギリス戦を最後に1年近く公式戦に出場しておらず、所属クラブのない状態が続いている。今後も選手として満足いくパフォーマンスを発揮し続けるために手術を決断。復帰時期は、来春をひとつの目安としているようだ。

