<アジアCL:鹿島9-1クルンタイバンク(タイ)>◇1次リーグ◇F組◇12日◇バンコク

 【バンコク(タイ)=広重竜太郎】日本代表の鹿島FW田代有三(25)がACL開幕戦勝利をもたらす2ゴールを決めた。クルンタイバンクとの前半16分、DFラインの裏に抜けて右足で決めると、後半5分にもGKとの1対1を粘り強くねじ込んだ。プロ入り後の得点試合の公式戦連勝記録を20に伸ばす勝負強さで、9―1の圧勝に導いた。G大阪はホームでチョンブリ(タイ)と1-1で引き分けた。

 田代が力強くゴールへ振り向いた。前半16分。相手のクリアをDF大岩がカットし、最終ラインの裏に抜けたFW田代が胸で受ける。ゴール前に詰める味方は探さない。GKを背にした状態から一気に反転して右足ボレーでたたきつけた。「前半0―0のペースは嫌だった。早い時間帯で点が取りたかった」。自らの足で先制弾を切り開いた。

 失敗は成功で取り返した。後半5分にはGKとの1対1を正面で外した。だが直後のこぼれ球を拾い、エリア内左の角度のない位置から左足でねじ込んだ。「最初で決めないといけない。みんなにも『ゴールのシュートの方が難しい』と言われた」と照れ笑いした。

 東アジア選手権で全3戦に先発で抜てき。だが成功にはおぼれない。帰国後はこれまで武器ではなかった反転シュートを練習した。てんぐにならないのは福岡大大濠高時代があるから。中学時代は運動神経抜群で相撲など市大会などに借り出されては優勝していた。だがバレー、バスケの名門の同校では体育の時間でも他部活の選手に身体能力の高さを見せつけられた。「中学までは何をやってもスポーツ1番だったけど、高校に入ったら○○代表とかすごいやつばかり。自分ができると思っていたのは間違っていた」と教訓を得た。

 東アジア選手権を回避した高原、巻、大久保のFW陣も3月26日のW杯予選バーレーン戦に帯同する可能性は大きい。また川崎Fジュニーニョも国籍取得申請に動いている。「レベルが上がるのはいいこと。ジュニーニョとはタイプが違うし、自分のいいところを出せばいい。それよりも今の自分ではダメ」。クラブ、代表戦通じて今季6戦目で生まれた初ゴール。だが現状に危機感を募らせる。「Jリーグで結果を出さないと呼ばれない」。この日の異国での2発は成長の過程にすぎない。