J2熊本FW巻誠一郎(35)が、地元ネットワークを駆使し、孤立した避難所へ次々と物資を送っている。

 21日はクラブでミーティングが行われ、5月15日のアウェー千葉戦からリーグ参戦を再開することが決められた。

 巻はその後も、取材対応などを行ったが、終了後はすぐに熊本市東区の倉庫へ。福岡県内の中継所で集約されてから「ホットライン」でまとめて運ばれてきた全国からの支援物資を、10トントラックなどの運送車両に積み込む作業に追われた。

 この日のフェイスブックには「地震から1週間がたちます。阿蘇を始め、嘉島、御船、甲佐、熊本市内の端の方などには、手持ちの食料が尽きつつある場所もあります」とつづった。前日までは、トラックに同乗し、被災者に直接物資を手渡ししてきた。しかしその道すがら、各地が危機的な状況にあるのを目の当たりにし、方針を変えた。

 地元出身ならではのネットワークで、協力者とともに200人体制の情報網をつくりあげた。ネット上では、多くの情報がシェアされているが、これらの「2次情報」では間に合わないケースもある。巻らは手分けして、直接足を運んだり、電話取材をしたり、SNSを駆使したりと、精力的に「1次情報」の確保につとめた。

 この中には、公的に認められてはいない避難所に関するものも入っている。これら生の情報に基づいて、必要な物資をできるだけ早く、必要とする避難所に送る。10台ほどの運送車両に積み込み、発送後も必要に応じて行き先を変えてもらうなど、臨機応変な動きで次々と物資を届けた。

 「今日通り掛かった避難所では、5人家族におにぎり2つしか配られないというところもありました。一方で、物資が山積みになっていて、誰の手にも渡っていない様子を見かけることもあります。多くの方が私財を倒れた家屋の下に残してきて、どうしようもない状況なのに…」。

 やり切れない思いが、巻を突き動かす。今後はリーグ再参戦に備え、練習も再開する。しかし、同時に被災者支援活動は継続しなければならないとも感じている。

 「プロですから、試合までには必ず選手としてベストコンディションにもっていきます。並行してやるのは大変だろう、無理をするな、と言われることもありますが、今は頑張るべき時。今やらないと、必ず後悔することになると思うんです」。

 倉庫での作業が終わったのは、午後9時過ぎ。巻は「両親や祖父母の近くにいてあげたいので」と言い、2時間以上かけて宇城市内の実家に帰って行った。