Jリーグ王者として開催国枠で初出場の鹿島が、南米代表ナシオナル・メデジン(コロンビア)に3-0で勝ち、アジア勢初の決勝進出を決めた。今大会から導入されたビデオ判定で獲得したPKを前半33分にFW土居聖真(24)が決めて先制すると、後半にはMF遠藤康(28)とFW鈴木優磨(20)が加点。アジア勢が南米、欧州の代表に勝利したのは14戦目で初の快挙。18日の決勝では、今日15日に行われる欧州代表Rマドリード(スペイン)-北中米カリブ海代表クラブ・アメリカ(メキシコ)の勝者と対戦する。

 歴史が変わった。Jリーグ国内最多18冠を誇る鹿島が4強の壁を打ち破った。前半から真っ向勝負。攻撃ではサイドをえぐり、守備では必死に耐えた。アジア勢で初となる決勝の舞台に立つ権利を得た石井監督は「相手の攻撃力と技術の高さに驚かされたが、うちは組織力で90分間戦えた。現場の選手、スタッフだけの力ではなく、クラブの力で勝ち取った1勝。日本サッカーに新たな歴史、1歩を踏み出すことができた」と胸を張った。

 前半33分、ビデオ判定から先制点を得た。土居は「PKでボールに行く人もいなかったし、自分で蹴ってやろうと思った。意外と冷静に蹴れた」と白い歯を見せた。後半38分に遠藤が加点。さらに2分後、途中出場の鈴木が左足で押し込み、Rマドリードのロナルドと同じ仁王立ちのパフォーマンスでほえまくった。

 昨年7月の石井体制発足後、現在は鹿島OBがズラリとコーチングスタッフに並んだことでプラスに転じた。特に指揮官が心労で休養から復帰以降、柳沢、大岩、羽田、古川コーチが“相談役”となった。常勝時代の伝統を若手に伝えてくれた。試合前のトイレ掃除で勝利の運を呼び込んでいた“儀式”を再開させた選手もいる。1回戦から7日間で3試合目。CS準決勝からは22日間で6試合。過密日程にも選手らは「予定通り」を強調し、勝利の喜びで疲労感を吹き飛ばし続けている。

 07年の浦和、08年のG大阪、11年の柏、15年の広島が崩せなかった牙城を崩した。アジア勢としても、欧州や南米との対戦では過去13戦13敗。日本のクラブとしては5度目、アジアとしても14度目の挑戦。しかも、今までリードしたことすらなかっただけに、価値ある1勝となった。

 Jリーグ創設から23年。クラブ世界一へ、初めて王手をかけた。決勝では欧州代表のRマドリードと対戦する可能性が高い。大会前から「俺たちは経験を積みにきたわけではない」と言い続けてきた主将MF小笠原は試合後、「まだ終わってない」と言いたげな表情を浮かべた。土居は「また歴史を塗り替えたい」。遠藤も「レアルとかに勝って初めて評価されると思う。試合後すぐは喜びましたが、みんな次に切り替えている。鹿島はタイトルが似合うチームだと思うので、次に勝たないと」。誰一人、満足していない。【鎌田直秀】