名門ジュビロ磐田が苦しみながらも、J1に生き残った。ホームでJ2東京ヴェルディに2-0で快勝。前半41分、FW小川航基(21)が自ら獲得したPKを冷静に左隅に決めた。引き分けでもJ1残留が決まる一戦で値千金の先制点。左ひざ前十字靱帯(じんたい)損傷や右肩脱臼などのケガに悩まされてきた若きエースが、クラブの命運が懸かった大一番でJ1残留に導いた。

磐田が意地を見せた。2点リードで試合終盤を迎えると、サポーターはこの日一番の「ジュビロコール」で選手を鼓舞。J1残留を決める試合終了の笛も大声援にかき消されるほどだった。選手やスタッフ、サポーターが一丸で臨んだ一戦。過去3度の年間優勝を誇る名門は、最後に勝ってJ1の座を死守した。

チームを救ったのは若きエースだった。小川航は前半41分、スルーパスに反応し、エリア内で倒されPKを獲得した。「大事な場面だった」。自らボールをセットし、大きく深呼吸。ゆっくりとした助走から左隅に流し込んだ。シュートは「意外と落ち着いていました」。蹴る直前まで冷静だったが、ゴールが決まると、ベンチメンバーも加わった歓喜の輪の中心で雄たけびを上げた。

スタメンが決まったのは試合2日前。紅白戦で主力組に入った。「絶対にやってやるという思いだった」。小川航にとって、苦い過去をぬぐい去るための試合でもあった。プロ2年目の昨季は、5月に左ひざの大けがで全治6カ月の長期離脱。今年7月にも右肩脱臼で戦列を離れた。プロ3年目の今季はリーグ戦13試合で1得点。世代別代表の常連で将来を嘱望されてきたが、プロ入り後は不遇の時期が長かった。

「まだまだ課題は多いけど、この舞台で決められたことは自分の成長にもつながると思う」。2020年東京オリンピック世代のエースと目される21歳はクラブの命運が懸かった一戦で輝いた。来季は「もっと試合に出ないといけない」と強調。残留に導いた若武者に、エースとしての風格が漂い始めた。【神谷亮磨】