53歳のカズがJ1のピッチに戻ってくる。横浜FCが愛媛に2-0で快勝してJ2を2位で終え、史上最長となる13年ぶりにJ1昇格を決めた。

FWカズ(三浦知良)は後半42分から出場。来季の契約はこれからだが、12月に予定するグアムキャンプで来季の開幕へ向け始動する。2月で53歳。17年のプロ最年長ゴールがギネス記録に認定されているが、来季はJ1の出場と得点で記録更新を狙う。

   ◇   ◇   ◇

40歳の時にJ1でプレーしてから13年後。カズが再びJ1の切符を手にした。後半42分に投入されると、果敢にプレスをかけ、チャンスでは全力でゴール前に駆け上がった。昇格の瞬間は下平監督、泣いていたDF武田と抱き合った。

カズ 40歳で立って、まさかね…。この瞬間を信じてやってきましたけど。僕は今日のピッチもそうですけど、みんなに立たせてもらったなという感じがしますね。ここまで連れてきてくれたチームメートにも感謝したい。

昨季、リーグ戦の先発は0。今季は2試合だった。だが「出番が回ってきた時に輝けるように」と準備を欠かさなかった。「うまくなりたい、試合に出たい、メンバーに入りたい。それだけ」。20代のころは先発以外は考えられなかった。読売クラブ時代、監督に先発から外れることを告げられ「ベンチには座らない。ベンチなら行かない」と拒否。日本代表では92年5月、アルゼンチン戦で後半36分で交代し、オフト監督(当時)に「オレを代えられるのはオレだけだ。オレの許可なく代えるな」と言ったこともある。以降、結果を出し続け、1度も代えられなかった。「それぐらい代えられるのは嫌だったし、プライドも高かった」。

年を重ね、ベンチ外も増えたが、気持ちに折り合いを付けて調整を続けた。「20代だったら難しかったでしょうね」とし「これも経験。怠けたら落ちるのは早い。苦しいこともやりますよ」。精神的支柱としてのベンチ入りでなく、「戦力」としてピッチに立つことにこだわった。8月には練習試合で得点を挙げ、競争を制して山形戦のメンバー入りし「勝ち取ったものにはすごい価値がある」と手応えを口にした。

J1には元スペイン代表イニエスタらスターがそろう。チーム内競争も激しくなる。カズは「勢いのある若手、外国人と勝負しないといけない。自分が出るのはチャンスとしては少ないとは思いますが、そこをどうアピールできるか」と見据える。12月にグアムキャンプを予定している。「この2年、出場機会が少ないし、得点できていない。そこを目標に自分自身、努力していきたい」。J1の舞台で「カズダンス」を披露すべく、再びストイックにサッカーに向き合う。【岩田千代巳】