日本サッカー界のキングが、新たな「聖地」のピッチに立つ。日本スポーツ振興センター(JSC)は9日、国立競技場のオープニングイベント(21日)への横浜FC・FWカズ(三浦知良、52)の出演を発表。この日、J1で戦う来季に向けて自主トレ先のグアムに出発したカズが、国立のピッチに初めて足を踏み入れる大役を担う。旧国立競技場の歴史を作ってきた背番号11が、再び国立競技場で歴史の針を動かす。

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やはり、この男しかいなかった。11月30日に完成したばかりの国立競技場。今月15日には竣工(しゅんこう)式を迎え、21日にはオープニングイベントが行われる。ボルトや桐生祥秀によるリレー、嵐やドリカムのステージ…。スポーツと文化の「聖地」誕生祝いは超豪華だが、神聖なピッチに最初に足を踏み入れるのは、カズだった。

19歳の86年、ブラジルの名門パルメイラスの一員として初めて国立のピッチに立った。93年のJリーグ開幕、97年のW杯予選、記録と記憶を残した。Jリーグでは最多20得点、日本代表でも最多29得点。誰よりも国立のゴールに鮮烈なシュートを入れてきた。カズの歴史は国立の歴史だ。

今月3日、完成したばかりの国立競技場への熱い思いを口にした。「再び聖地にしたい」「J1の舞台でまた立ちたい」「いい思い出しかない」…。この日も「多くの応援と勇気をもらった思い入れの深い大切な場所」で「幸せな瞬間を楽しみに」とコメントした。

発表されたのは「最初にピッチを踏む」ことだけ。登場方法や何をやるかについては「演出上のことなので」で極秘にされた。しかし、誰よりもファンを大切にし、期待に応えてきたカズ。風船から飛びだすか、ダンスを踊るか、日本スポーツの歴史的な瞬間に、カズの演出も楽しみになる。

来年1月1日にはサッカー天皇杯決勝、11日にはラグビー大学選手権決勝、東京五輪ではメインスタジアムとして世界にお披露目される。新しい「聖地」として数々のドラマを生む国立競技場。走り続けてきたカズが、その歴史の第1歩に名を刻む。【荻島弘一】