J1鹿島入り内定の静岡学園MF松村優太(3年)が、後半ロスタイムに自身が得たPKを、右隅に決めて今大会初ゴール。矢板中央(栃木)に24本のシュートを浴びせた一戦に決着をつけ、24大会ぶりの決勝進出を導いた。決勝は13日に埼玉スタジアム(午後2時5分)で行われる。

   ◇   ◇   ◇

劇的な決勝点だった。PK戦に突入間際、松村が決めた。後半ロスタイム、右サイドから仕掛ける。パス交換でエリア内に進入すると、相手に倒されPKを獲得。自らキッカーを志願し、右足で確実に決めた。「外したら負けるぐらいの気持ちで蹴った。GKは見ずに、自分の決断を信じた」。直後に試合終了のホイッスル。仲間たちと歓喜に酔いしれた。

矢板中央の堅守に攻めあぐねた。相手のシュート数2本に対して、チームは実に24本。打てでも打てどもGKにセーブされた。松村自身も5本止められたが、集中力は失わない。「PK戦になったら、相手の思うつぼ。90分で決めるつもりだった」。攻めの姿勢を貫き、ゴール前を固めた相手の守備網を土壇場でこじ開けた。

今大会は相手の徹底マークを受け、準々決勝まで無得点。もどかしい状況が続いたが、冷静だった。静岡県大会でも準々決勝まで無得点も、準決勝と決勝の2試合で3得点。「自分はスロースターター。県大会と同じだったので、そろそろ取れると」。予感を的中させ、大舞台での強さを証明した。

入学当初は、50メートル5秒8の俊足頼みの無名選手。それが川口監督から「点を取ることで選手としての価値が何十倍にもなる」と鼓舞され、意識を変えた。本格練習前にある個人技に特化した約20分間のボールコントロールのメニュー。毎日より真剣に集中して取り組んだ。「足の速さに頼る部分が多かったが、高校で足元の技術が伸びた」。日々の積み重ねもあり、速さとうまさを兼ねたドリブラーに変身した。

鹿島への入団が内定しているが、将来的には欧州挑戦を夢見ている。「自分の大会にするぐらいの欲があってもいい」。24年ぶりの全国制覇で、サッカー王国の復権を実現し、プロの世界に飛び込む。【古地真隆】