新型コロナウイルスの感染拡大による影響は、日本全国の街クラブにも及んでいる。

活動停止を余儀なくされ、収入はゼロ。将来サッカーが日常に戻ってもクラブが存在しないという危険が、全国各地に潜んでいる。そんな最悪のシナリオを回避すべく、日本サッカー協会(JFA)は財政支援制度を設立。21日時点で115件、総額2億1007万円の融資を決めた。

第2種(18歳未満)以下の約400人の会員が属する「FCトリプレッタ」は今回、410万円の融資を受けた。米原隆幸代表兼総監督(50)は「率直に言うと6月まで長引いて活動ができないと厳しい状況だった」と現実を吐露したうえで「迅速な対応をしてもらった。キャッシュフローがあるだけで精神的に安心する」と、ひと息ついた。

通常、人件費などの支出は毎月約500万円。月謝、サッカースクール、物販などの収入で安定経営を続けてきたが、4月からの活動休止で収入が断たれた。それでも専任とアルバイトを含めたコーチ約25人には、給与を払い続けた。「サッカー文化や歴史が広がっていくには、指導者のステージも上げないといけない。引き留めるために満額の給料を払い続けるのは意地としてありました」。クラブの貯蓄でやりくりし、活動再開の光が見えていた今、融資を受けられた。

休止期間中、練習動画の配信などでコミュニケーションをとってきた子どもたちと、直接会える日が近づいている。「しばらく『あれはしちゃだめ』って制限が続くことを考えると、いろんな経験をできず大人になっていくのはかわいそう。気持ちを緩めずしっかり管理しながら、まずは好きなサッカーを思う存分やらせてあげたい」と表情を緩めた。コロナ禍をしのいでクラブの歩みを再び未来へと進めるが、ここがゴールではない。「知り合いのクラブでコーチに給料を出せない、休業中は一切出ないって人もいる。そういう人たちが離れていかなければと思っています、仲間として」。苦しみや厳しさを知るいち街クラブとして、サッカー界の“家族”にも思いをはせた。【浜本卓也】

◆FCトリプレッタ 1997年に創設。本拠地は東京・渋谷区。トップチームは東京都社会人サッカー3部リーグに所属。第2種(18歳未満)第3種(15歳未満)第4種(12歳未満)のカテゴリー分かれ、会員数は約400人。幼児と小学生が対象のスクールも、渋谷と町田の2カ所で随時開催している。

◆JFA財政支援プログラム 「新型コロナウイルス対策 JFAサッカーファミリー支援事業」の1つ。新型コロナの影響で活動ができない状況にある組織や個人が対象で、第1次支援はクラブ対象の融資型で受付は6月末まで。限度額は規模に応じて30万円から500万円で、最長10年の無利息・無担保。JFA公式サイトの申請フォームから申し込める。サッカーファミリーを支援する「支援金」も募集中(みずほ銀行渋谷支店 普通預金 口座番号3079244)。