鹿島アントラーズのジーコ・テクニカルディレクター(67)が6日、練習後のオンライン取材に応じた。

2月のJリーグ中断後、定期通院のため母国ブラジルに帰国していたが、新型コロナウイルスの感染拡大により、Jリーグ再開後も再来日できずにいた。7月末にようやく日本に戻り、14日間の隔離期間をへて、4日に練習場に復帰していた。

ブラジル滞在中も練習や試合の映像を見るなど、常にチームのことを気にかけていたという。チーム合流後に感じたのは“パッション”の欠如だったといい、選手には「攻撃的なサッカーだろうが守備的なサッカーだろうが、前提として戦うこと、最後まであきらめない姿勢を出さないと、サッカー以前の問題」と強調したことを明かした。

5日のルヴァン杯川崎フロンターレ戦では、0-3の後半途中から投入された選手たちが奮起し、10分で2点を返してなお相手ゴールに迫った。ジーコ氏は「昨日の試合は分かりやすい例だった」と話し、「入った選手が闘争心をむき出しにして、球際を制して、相手に圧力をかけて、逆転できそうなところまでいった。攻撃的とか守備的とか以前にそれを出さないと、個の意欲がなければ何も始めることができない」と、あらためてチームに足りない要素を訴えた。

選手やスタッフが大幅に入れ替わった今季、鹿島らしさが薄れることはシーズン前から分かっていた。その点で、鹿島の強さを支えてきた「献身、誠実、尊重」のジーコスピリットを植え付けたレジェンドが戻ってきたことは、チームにとって大きなプラスになるはずだ。

久しぶりに合流した練習では、監督の意図をピッチで表現しようと努力する選手の姿が見られたという。それでもジーコ氏は「サッカーはただ技術があればいい、フィジカルが強ければいいだけでなく、パッションも絡んでくる。何が何でも勝つんだという気持ちがなければ、いくら技術が優れていても勝つのは難しい」。勝者のメンタリティーを取り戻し、不振のチームを立て直す。

【杉山理紗】