53歳のカズ(三浦知良)がJリーグの公式戦最年長出場記録を更新し続ける今季、もう1人のレジェンドが大記録に挑戦中だ。

G大阪MF遠藤保仁(40)が持つ、Jリーグ歴代最長の連続シーズン得点記録だ。五輪世代の堂安律らが生まれた98年に横浜Fでデビュー以来、毎年得点してきた。昨年4月20日大分戦のゴールで22年連続へと更新。今年7月に樹立したJ1最多出場記録にも負けない金字塔だ。

だが、23年連続への道のりは険しい。G大阪は今季、ここまで9試合を消化。新型コロナの影響で中断期間が長かった割に、もう3分の1近くが終わろうとしている。過密日程や戦術的な理由もあり、遠藤は6試合出場(先発3)にとどまり、ゴールはない。

今季は交代枠が5人に増え、どこも前線を優先的に投入するパターンが目立つ。遠藤が先発しても、同じく交代枠の理由でフル出場は難しい。残り25試合の出番も必然的に限られる。

しかも今季はコロナ対策とし、Jリーグ全試合の75%と全クラブが50%以上を消化すれば、大会が成立する規約になった。試合数削減の可能性がある。

そもそも論だが、攻撃の中心だった00年代と違い、近年の遠藤は守備的な位置が多い。歴代1位のPK成功数(31得点)など際立つ攻撃センスがなければ、MF登録で歴代1位の103得点などマークできるはずがない。最近3年はすべて年間1得点…記録は綱渡りだが、更新自体が奇跡的だし、実力でもある。

最近は「調子が出ない選手に蹴ってほしい」という信念から、16年10月29日新潟戦での得点を最後に、代名詞のPKも仲間に譲る。セットプレーを蹴る場面は今もあるが、PK役はアデミウソンらFWだ。

本人は正確なパスの延長線上にシュートや得点がある考え。勝つためには常に得点は狙っているし、仲間が今後「ここは蹴ってください」とPKを託す場面があれば、ぜひ4年ぶりに蹴ってほしい。プロ野球では、個人タイトルのための選手起用や采配は当たり前。記録とは、応援する人への報いにもなるからだ。

遠藤の愛称から、クラブは8月10日は“ヤットの日”と制定しており、直近の試合は19日浦和戦。心配性の記者をよそに、背番号7なら、あっさりゴールを決めているかもしれない。それだけの実力、持ち前の勝負運はまだある。

◆横田和幸(よこた・かずゆき)1968年(昭43)2月24日、大阪府生まれ。91年日刊スポーツ入社。96年アトランタ五輪、98年サッカーW杯フランス大会など取材。広島、G大阪などJリーグを中心にスポーツ全般を担当。