驚異の粘りを見せた帝京長岡だったが、悲願の決勝進出は次回大会へ持ち越しとなった。2年連続で臨んだ準決勝。山梨学院に2点を先取される苦しい展開となったが、後半14分、33分に主将のMF川上航立(3年)が立て続けにゴールを奪い、ゲームを振り出しに戻した。2-2で突入したPK戦では1年生GK佐藤安悟が3人目からのキックを2本連続でストップしたが1歩及ばず、力尽きた。

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PK戦終了を告げる長いホイッスルが鳴ると、緑のユニホームに身を包んだ選手たちはぼうぜんとした表情を見せた。後半5分に0-2と窮地に立たされた後、主将の川上が前線への飛び出しとPKで2得点。驚異の粘りで同点に追い付き突入したPK戦だった。

無観客で静まりかえるスタジアムが逆にキッカーの緊張感を高めたか。チームはキックミスを重ね、0-2。ここからGK佐藤が山梨学院の3人目、4人目を連続で止め、ゲーム同様に流れを引き戻したかに見えたが、粘りもここまでだった。

ゲームの開始早々の21秒と、後半の立ち上がりで失点。だが運動量を生かした前線からの守備とクオリティーの高い攻撃で徐々に山梨学院を圧倒していく。後半は面白いようにパスが回り、ここまで4試合1失点の相手を苦しめた。同点後も猛攻を仕掛けたが勝ち越せず、念願の日本一は消えた。古沢徹監督(35)は「決勝進出が遠いな、と。立ち上がりとロングスローでの失点。そこを抑えて入っていかなかった私の責任。ただ、県予選の最初から比べると見違えるようなチームになった。よく頑張った」と選手をたたえた。

今大会では試合を重ねるごとに3年生と下級生が融合し、チームの完成度が上がった。前回大会はJクラブ入りした3人を含む『黄金世代』で初の4強入り。古沢監督は今大会前、「それほどのタレント性があるチームではなかった。(現3年生の)入学当初はとにかく勝てなかった」。県外遠征から帰るとそのままグラウンドに直行し、照明が消されても走り込みをすることもあった。川上は「自分たちの代で、ここまでこられるとは思っていなかった。古沢監督の愛情を感じながらサッカーができた。帝京長岡に来て良かった」。

県勢悲願の決勝進出は2大会連続で持ち越した。次回は選手権100回目の記念大会。古沢監督は今大会で主力を務めた1、2年生に「この経験を生かして欲しい。期待はしているが勘違いせず、毎日のトレーニングに励んでほしい」と言葉を送った。【小林忠】

○…長岡市の同校では、控えの男子部員と全日本高校女子選手権で県勢初の4強入りを果たした女子部員がテレビ画面を見ながら声援を送った。試合開始早々の失点には声を失ったが、後半の追い上げでテンションが上がり、川上主将の同点PK時に盛り上がりは最高潮に達した。決勝進出こそならなかったが、粘り強さを発揮したイレブンを後押しした全力応援は最後は健闘をたたえる拍手で終えた。