2011年の東日本大震災から10年の節目、「希望の光」へまい進する仙台はホーム開幕戦で、王者川崎Fに1-5で力負けした。両チームは同年4月23日、この試合と同じシーズン2戦目のリーグ再開初戦に対戦。当時、仙台はアウェー等々力で2-1の逆転勝利を飾ると、開幕12戦無敗と加速し、最終的に4位と躍進した。再現はならなかったが、あの時もピッチに立ったMF関口、MF富田を中心にひたむきに戦った。

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「希望の光」再び-。震災から10年。被災地を照らす仙台の第2章が始まった。ホーム開幕戦のチケットは完売。9005人が集まったスタンドからは「全ての仲間にありがとう。故郷を取り戻すまで俺達は負けない!」との横断幕が掲げられた。キックオフ直前には金色、水色のユニホームを着た両チームの選手が入り交じって並び、犠牲者へ黙とうをささげた。

震災当時、仙台を率いた手倉森誠監督(53)が「天に導かれた」と8季ぶりに復帰。前節の開幕広島戦では退場者を出しながらも粘り、勝ち点1をつかんだ。広島、川崎Fの開幕2連戦は躍進した11年と同じ並びで「ありがたいストーリーをJリーグが作ってくれた」と話し、昨季17位からの巻き返しを目指している。

この試合の先発には10年前の川崎F戦でフル出場した関口と途中出場した富田が名を連ねた。指揮官は「あの時にピッチに立っていた富田、関口にキャプテンをしてもらいたいというのが自分のシナリオにあった。富田が1年3カ月ぶりにルヴァン杯で復帰して、去年1度もこのピッチに立てなかったのでぜひキャプテンマークと一緒に披露したかった」。昨季、左膝の前十字靱帯(じんたい)損傷で長期離脱していた富田に思いを託した。

ただ、関口は前半26分に負傷交代。富田も前半で退いた。試合は王者の圧力に屈して前半に4失点。ホーム黒星スタートとなり、手倉森監督は「両チームにとって特別なゲームだった。我々はホーム開幕戦で王者川崎に何とか牙をむいて、被災地に勇気と希望を届けたい試合だったが、10年前に勝たせてもらった借りを返された」と悔しがった。

仙台は11年4位、12年2位と「希望の光」になったあの時のように、被災地東北とともに特別な1年を歩んでいく。【山田愛斗】

○…東日本大震災10年プロジェクトとして試合前のピッチでは防災サッカー教室や復興トークショーが行われた。仙台のOB太田吉彰氏、川崎FのOB中村憲剛氏らも参加。中村氏は10年前の試合を「僕らの等々力でやりましたけど、仙台のパワーというか勇気、元気を与えられる戦い方を対戦相手としてすごく感じました。負けたけど納得してしまう自分がいたのはプロ生活で最初で最後だったと思います」と振り返った。

◆2011年4月23日、川崎F-仙台 雨が降りしきる等々力陸上競技場で震災後のリーグ再開初戦、開幕2戦目(第7節)として行われ、仙台が2-1で逆転勝ちした。川崎Fが前半37分、DF田中裕介のゴールで先制。仙台は後半28分、MF太田吉彰が右足を振り抜き同点とする。同42分、MF梁勇基のFKからDF鎌田次郎が頭で合わせ、逆転ゴールを奪った。試合後、手倉森監督は涙を流した。仙台にとってJ1でのアウェー逆転勝利は49戦目にしてクラブ史上初めてだった。