Jリーグは19日、来季からホームタウン規定を一部緩和することでクラブ側と合意したと発表した。ホームタウン外でのサッカークリニックやイベントの開催、ショップなどの事業展開などが可能になる。地域密着というホームタウンの原則は堅持し、ホームゲームは従来の規約通り、8割以上を本拠地で開催する。多様化する時代の変化に合わせ、各クラブの活動やアイデアが地域外でも発揮されることになりそうだ。

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ホームタウンの規制緩和は「人の流動化」「クラブのファンベースの多様化」「マーケティングのデジタル化の加速」など、時代の変化を背景に、今年4月から本格的な議論が進んできた。来季からは地域密着の理念はそのままに、各クラブがホームタウン以外での事業活動が可能になる。

実際、現居住地域と出生地が違う人が増え、鹿島など、ホームタウン以外に住むサポーターが多いクラブもある。JリーグのID登録データベースでは「ホームタウン所在都道府県以外に住むファンの数は約30%~75%」とのデータもある。これまでは、東京で広島のサポーターが集うパブリックビューイングは「ホームタウン外のイベント」になるため暗黙の了解で行われてこなかったが、今回の緩和で実現可能となる。

そのほか、サッカークリニックの実施、協賛営業、商品化事業など、実施を希望するクラブの地域の制限はなくなる。東京・銀座に各都道府県がアンテナショップを展開しているように、クラブのショップを展開することもできる。

出井宏明パートナー・放映事業本部本部長は「バルセロナが日本国内でクリニックをやっている。クリニックに関しては、需要があってビジネスとして成立するのであれば展開は可能という考え方になる」と説明。各クラブの事業の選択肢を広げることで、クラブとリーグ全体の事業機会の拡大につなげる意図があり、適正な競争による事業成長にも期待を寄せている。

Jリーグが何度も強調したのは、地域密着というホームタウンの原則的な理念は変えないことだ。木村正明専務理事は「ホームスタジアムでホームゲームの8割以上を開催することも規約で定めている。我々の理念で変わることがない前提で、そこは議論にはなっていない。これらの理念を具現化している規約、活動方針に一切の変更はございません」と話した。【岩田千代巳】