今夏の高校総体道予選初戦敗退の北海が、同予選優勝の旭川実をPK戦の末に下し、2年ぶりの優勝を飾った。0-0の延長後半途中、総体予選敗退後にレギュラーを剥奪され“PK職人”となったGK神宮快哉(3年)が出場。PK戦で4人目のシュートを止めると、最後は2回戦のPK戦で唯一失敗していた5人目のMF長谷川悠翔(3年)が決め、本大会(12月28日開幕、東京・国立競技場ほか)出場を決めた。

北海が執念で下克上を成し遂げた。0-0で突入したPK戦。後半途中出場のGK神宮が4人目のシュートを左に横っ跳びしセーブ。大事な場面で職人技を披露すると、最後は長谷川が落ち着いて左隅へ流し込んだ。夏の屈辱から4カ月。全員で抱き合って、厚別の秋空に雄たけびを上げた。

長谷川は2回戦の札幌創成戦でPK戦5人目のキッカーを務め、外していた。「蹴る前に神宮から『思い切り蹴って来い。外しても俺が6人目を止める』と言われ楽になった」。神宮は夏の総体道予選敗退後に控えに降格。今大会前の大学生との練習試合でPKを止め、PK職人としての役割をつかんだ。神宮は「役目を果たせてうれしい」。悔しい思いをしてきた2人が、勝利を呼び込んだ。

全員で「本気」の意味を追求してきた。9月下旬に左MF川崎啓史副主将(3年)が左足首を骨折。全治2カ月半で全国切符をつかめば復帰できる。練習着の胸に「啓史を全国へ」と書いたテープを貼り練習を始めた。だが島谷制勝監督(52)には「青春ごっこならやめていい。そんなことで啓史は喜ばない」と一蹴された。主将のGK伊藤麗生(3年)は「目が覚めた。本当に大事なのは格好じゃないと気付いた」。プリンスリーグにも入れない弱小集団。格上に勝つにはどうしたらいいのか。声を出せない者は名前を挙げ厳しく指摘し合うなど、緊張感ある練習が心を磨く素地となった。

準決勝の札幌大谷戦は押し込まれながら辛勝。決勝前夜のミーティングで、点を取る方法を話す選手たちに川崎が「敵陣に入る方法から考えないと」と核心を突いた。伊藤は「冷静な啓史の意見が役に立った」。このひと言は、劣勢の中でも機を見て仕掛ける姿勢につながり、相手の猛攻をいなす要因となった。

5戦2失点と堅守でつかんだ2年ぶりの全国切符。伊藤は「全国は啓史と一緒に戦える。それまでに、もっと成長しないと」。次は04年以来17年ぶり選手権1勝を狙う。【永野高輔】

○…北海の3年生野球部員がスタンドから応援し、勝利をアシストした。今春夏と甲子園に出場し、ドラフト会議でソフトバンク3位指名を受けた木村大成投手、巨人育成10位の大津綾也捕手(ともに3年)も、普段は隣のグラウンドで練習する仲間のプレーを見守った。木村は「自分たちのことのようにうれしい。夏の南北海道大会決勝は、サッカー部が応援に来てくれたおかげで優勝できた。恩返しできて良かった」と話した。