鈴鹿のFWカズ(三浦知良、55)が、JFL初ゴールを決めた。後半39分、CKのチャンスに交代出場すると、直後に相手のハンドで得たPKを右上すみに決めた。出場1分後、ファーストプレーでチーム3点目を決めると、右手をあげてベンチ前まで走り、カズダンスを披露。チームメートに祝福されると、スタンドも大きく揺れた。

カズのリーグ戦での得点は、J2横浜FC時代の17年以来5年ぶり。負傷から復帰して以来9試合連続でピッチに立ち、自身のJFL最年長出場記録を55歳246日に塗り替えるとともに、同得点記録は13年FC琉球の永井秀樹の42歳50日を大幅に更新した。

リーグ戦残り4試合、苦しんだ末のゴールだった。昨季J1横浜FCで出場1試合1分だけに終わり、試合出場とゴールを求めて実質4部にあたるJFLに活躍の場を移した。開幕から1試合を除いて出場を続けたが、5月15日のホンダ戦で右太ももを負傷。先月4日、ヴィアティン三重とのダービー戦で復帰するまで3カ月半も離脱した。

治りかけて再発した。カズ自身も「苦しかった」と振り返った。慎重にもなった。30年前なら無理できたが、年齢とともに回復に時間がかかる。「難しいね。練習しても反動がいつくるかも分からない」。トレーナーも、ドクターも、そして本人も手探りだった。

それでも、戦列に戻ってきた。「状況はよくなっている。痛みも消えている」と話し、先発復帰を目指してきたが、無理はできなかった。兄の泰年監督も「本人とも話しながら、やっていきたい」と話していたものの、出場時間はわずか。「(先発で)やってないから、分からない」と、本人も焦りの色を見せていた。

それでも、カズの存在は大きかった。11年ぶりに国立競技場のピッチに立った9日のクリアソン新宿戦では、1万6218人の観客を集めてJFL最多記録を更新。23日の奈良クラブ戦でも1万4202人。「たくさんの人が見に来てくれるのは、幸せ」と話したカズだけに、声援に応えるゴールが欲しかった。

3-1の勝利に貢献したカズは、何度もスタンドに向けて右手をあげた。鈴鹿からやってきたサポーターにも、ホーム枚方のファンにも、そして詰めかけた報道陣にまで。満面の笑みで手を振り続けた。

「もう、記録はいいでしょ」と、試合ごとに最年長出場記録を報じられることを嫌がった。7日ずつ更新される記録以上のものが欲しかった。「やっぱり、ゴールですね」と言って鈴鹿の練習に参加してから9カ月、ようやく偉大な記録とともに記憶にも残るゴールを見せることができた。