新しい景色だ。

W杯カタール大会日本代表MF鎌田大地(26)の母校、東山(京都)が、前回大会準優勝の大津(熊本)と対戦。1-1で突入したPK戦を4-2で制した。MF松橋啓太(3年)が、同点ゴール、決着をつける4人目のPKキッカーと同校初の決勝進出に貢献した。9日の決勝(国立)では互いに初Vをかけて、岡山学芸館と激突。京都府勢として67年度大会の洛北以来、55大会ぶりの頂点に王手をかけた。

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劣勢の東山を救ったのは、松橋の一撃だった。0-1の後半18分。CKの流れから、相手のクリアボールが飛んできた。ペナルティーエリア内、ゴールの左45度。ダイレクトでのシュートを考えたが「ボールが浮いていて難しい」と、とっさの判断で左にトラップ。結果的にブロックに飛び込んだ相手DFをかわす形になった。

「前が大きく空いて、スローモーションに見えた。自分を信じて蹴り込んだ」。

右足インサイドでシュートを放つと、懸命に伸ばした相手DFの足をはじいてゴールネットを揺らした。起死回生の同点ゴールだ。

松橋の得点で追いつくと、1-1のまま90分を終了。勝負は準々決勝・日体大柏戦に続きPK戦に持ち込まれた。松橋は、決めれば勝利の「4人目のキッカー」として、準々決勝と同じ右下のコースに蹴りこんだ。「同じ方向でも決められる自信はあった。仲間が来て、勝ったと実感がわいた」と笑みを浮かべた。

G大阪門真ジュニアユースからユースに昇格できず、東山に入学した。G大阪ユースを逃しての入学は、日本代表で活躍する鎌田と同じ道だ。中学時代は2列目の左でプレーも、守備や走力に課題があり、試合出場はほとんどなかった。東山では1年の終盤にFWからボランチに転向した。

「東山で中学の頃と全てにおいて変わった。基礎技術も上がって、走る部分、守備の部分。当たり前のことができるようになった」。

高2からMF真田蓮司(3年)とボランチでコンビを組み、全国舞台を経験した。前回大会は準々決勝で、MF松木玖生(現J1東京)を擁した青森山田に1-2で敗れた。「去年の青森山田はすべてのレベルが高かった。みんなが、このままではダメだと、日常練習で強度を含め、すべてのレベルを上げようと、厳しく練習に取り組んだ」。

夏の全国高校総体ではベスト16で涙をのんだが、悔しさを胸に愚直に取り組んだ結果、新しい扉が開いた。悲願の初優勝まで、あと1勝。松橋は「この1年、日本一を取る気持ちだけで練習してきた。蓮司(真田)と日本一のボランチになる」と揺るがぬ目標を口にした。【岩田千代巳】

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