「琵琶湖の海賊」近江(滋賀)は、「ラスボス」青森山田の牙城を崩せなかった。

黒ひげの親分、前田高孝監督(38)の号令のもと、多彩な攻撃と泥臭い守備の「パイレーツ・フットボール」で快進撃を続けた。2005年(平17)度の「セクシーフットボール」野洲以来、18大会ぶりの優勝には届かなかったが、ピッチ外の話題も含め国立を埋めた5万5019人のファンを最後までわかせた。

前田監督の目は赤く充血していた。涙がにじんだ跡が見えた。

「後半はいろんなところでコンパクトなフィールドをつくりながら、局地戦で勝つ可能性を意識しました」

ただ最後は力負けし、「彼らの頑張りを結果に結びつけられない指導者の未熟さが出たゲームだったかなと思います」。

ピッチ内での魅力的なサッカー。加えて「ホープ軒のラーメン食べたい」「黒ひげ危機一髪」などユーモラスな前田監督の言動が耳目を集めた。

さらには「ここまで来るとは…」と、想定外の決勝進出で遠征資金が底をついた。決勝を前に緊急のクラウドファンディングを開始し、自らメディアに頭を下げた。すると青森山田戦の直前、目標額の1000万円をクリアした。世間の注目を味方にし、流れは近江にあった。

1-1の同点としたところまでは狙い通りだった。ただ最後はラスボスの勢いにのまれた。

黒ひげの親分は「初めて選手権で決勝までいかせていただいて、何がうれしかったって、選手の成長なんですよ。本当に格好よかった、彼らは」。

優しいまなざしで最高の子分たちをたたえた。【佐藤隆志】

【高校サッカー】スコア速報はこちら