【ドーハ(カタール)19日】W杯カタール大会が、20日(日本時間21日午前1時)のカタール-エクアドル戦をもって開幕する。初の8強を目指す日本代表の森保一監督(54)は現役時代、93年の「ドーハの悲劇」を経験した。日本サッカー界の歴史にも刻まれた因縁の地に、監督として戻ってきた。世界の猛者が集う特別な舞台で、森保ジャパンがいよいよ出陣する。

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W杯がいよいよ幕を開ける。森保監督は練習の開始前に集合写真を撮影。柔らかな笑顔で収まると、引き締まった表情に変わり、選手を円陣に集めた。この日から、ウオーミングアップ以外は非公開。ドイツ戦に向け本気モードに入った。前日18日夜には開幕にあたり、こう話していた。「変な高ぶりがない。本当に気持ちの浮き沈みがない」。

あれから29年がたった。「Pura Vida Ticos(ごきげんよう、コスタリカ)」。ドーハ市内に位置するアル・アリ競技場。その入り口には、日本が第2戦で対戦するコスタリカを歓迎する看板が立っていた。日本にとって93年の悪夢の地は今大会でコスタリカの練習場。面影は消えていた。ただ、森保監督が期間中にこの場所を訪れる予定はない。

初のW杯まであと1歩だった。後半ロスタイム、ショートコーナーから悪夢の同点ゴールを決められた。ドーハの悲劇。日本サッカー界に深く刻まれている記憶。チームの一員だった指揮官が懸命に投げ出した体はクロスに届かず、そのままゴールを許した。「サッカーやる限り、あれ以上悲しい思いをすることはないと思う」。かつて個人的に映像を見返すことはないという。ドーハへの因縁めいた気持ちは封印。現在の「森保ジャパン」だけに集中している。

失意から得た糧は「すべてをポジティブに考えていくこと」。監督就任からの4年間は苦労の道のりだった。コロナ禍で強化のための国際親善試合は激減。負傷者や移動のトラブルも頻発した。「アクシデントはつきもの」と笑って受け入れてきた。

ここまでの道のりでは批判にもさらされた。「『監督がダメだ』と言われるのはいい。ただ、単純に日本人と外国人を比較して『結局日本人はダメじゃないか』という声もある。日本人全体で考えた時に、『自分たちはダメだ』ということにはならないでほしい。もっと、自分たちはやれる」。

日本人監督として初めて、予選を勝ち抜き、ドーハへの“再挑戦”の権利を得た。誰よりも、指揮官が自信を持っている。メンバーは欧州組を中心に構成されるまでになった。ドイツ、スペインと聞いただけで尻込みする選手はもういない。日本は世界と同じ、それ以上の目線で戦える。目指すは史上初のベスト8。今大会を通して証明したい。

開催国カタールとエクアドルによるオープニングゲームで、熱戦の火ぶたが切られる。史上初のベスト8を持って、ドーハの悲劇を自らの手腕で歓喜に変える。森保ジャパンの4年間の集大成を見せる舞台が、開幕する。【岡崎悠利】