【アルワクラ(カタール)5日】FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会で、日本代表(FIFAランク24位)はクロアチア代表(同12位)にPK戦の末に敗れ、史上初のベスト8進出はならなかった。森保一監督(54)は悔しさをにじませながらも、世界で勝てる日は必ずくると声を大にした。

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森保監督は約6秒間、深々と頭を下げた。試合後、選手がピッチから引き揚げるのを見届けると、1人ゴール裏へ。

「このすばらしいW杯という舞台に立って戦えたのは、多くの選手が道をつないでくれ、関係者、国民のみなさんが応援してくれたから」

ありがとう、そして道が途絶えて申し訳ない。押し寄せる感情を込め、すっとお辞儀をした。

「新しい景色を」

初の8強進出を目標に掲げた合言葉だった。4年前はベルギー代表に衝撃のカウンターを受けた。

「ロストフの悲劇」を乗り越えるための戦いは、PK戦の先に無念が待っていた。ピッチで泣き崩れる選手たちの中央に立って必死の形相で声をかけたが、「自分でもなにを言ったか覚えていない」。

現役時代に経験した「ドーハの悲劇」のときも、試合後の記憶がない。またも、新たな扉に手をかけながら、閉ざされた。

気丈に語った。

「『新しい景色は見ることはできなかった』と言われるかもしれないが、ドイツ、スペインに勝って、優勝経験国に勝てるという新しい景色は選手が見せてくれた」

悔しくてたまらない気持ちを、前向きな言葉に押し込んだ。W杯では歴代最強の日本代表だったことは、間違いない。

監督業に身を置いてから「24時間をサッカーにそそぐ」と心に決めた。欧州組が増えた今は、昼夜問わずスマホやテレビをチェックした。代表活動があるたびに、早朝や深夜にクラブに戻る選手をホテルのロビーで待って見送った。試合に負けて猛烈な批判にさらされても「家族のほうがつらい思いをしていると思う」と、どこまでも「人」を思った。

監督としては「策士ではない」と自ら言う。だからこそ、選手の言葉にも耳を傾けた。練習メニューだけでなく、食事の時間までも。DF吉田主将が「みこしをかつぎたくなる監督」と話すように、選手が「この人を男にする」と動いた。

約4年半の旅が終わった。ベスト8の景色はまた、見られなかった。ただ、日本は世界が恐れるべき存在だと示した。日本協会は続投のオファーを出すことが確実視される。

「必ず、最高の景色が見られる日がくると思う。選手はもっと成長できる」

2026年大会に向けた歩みが、スタートした。【岡崎悠利】