磨いていた技がこれ以上ない形で実った。
クロアチアFWミスラブ・オルシッチ(29)は「キャリアの中で最も重要なゴールになった」と興奮気味に振り返った。
技巧派のクロアチア代表にふさわしい、超技ありのゴールだった。同点に追いつかれ迎えた前半42分。中央からペナルティーエリア左に展開し、オルシッチがパスを受けた。右足ではね上げるように放たれたシュートは、スピンがかかった。ゆっくりと弧を描いたボールは右ポストに当たると、そのままゴールへと吸い込まれていった。
代表デビューは26歳だった19年という苦労人。21年の欧州選手権で初得点を挙げ、これが2ゴール目。この日は今大会7試合目にして初先発。主力がケガで欠場し、巡ってきたチャンスだった。「家族、妻、子どもたちにささげたい。今はこのゴールを祝福したい」。これまでの日々を振り返れば、喜びもひとしおだ。
クロアチアのインテル・ザプレシッチでプロ生活がスタートしたが、その後は各国を渡り歩く日々だった。イタリア、スロベニアと移り、15年に韓国の全南ドラゴンズへ。中国の長春亜泰で1年間プレーすると、再び韓国の蔚山現代へ。アジアの4年間で鍛錬を積み、18年から母国の強豪ディナモ・ザグレブに所属。異国でもまれた経験がここに来て花開いた。
実は、ブラジルとの準々決勝でもチームを助けていた。1点を追う後半延長9分にピッチに立ったオルシッチ。その3分後、ペナルティーエリア内に侵入し、FWペトコビッチの劇的な同点ゴールをアシストした。
「私たちが何を成し遂げたか、まだ分かっていない。家に帰ったら分かるかもしれない」。代表に選ばれてさえいなかった4年前。チームの力になった実感はゆっくりと湧いてくるはずだ。【磯綾乃】


