欧州サッカー連盟(UEFA)は20日、ブダペストで開催された欧州選手権1次リーグF組ハンガリー-ポルトガル戦およびハンガリー-フランス戦で差別的な事象があったとして、調査に入ったことを発表した。スタンドに「反LGBTQ(性的少数者)」の横断幕が掲げられていたことが、SNSなどにアップされた写真から確認されたという。

ハンガリーでは先週、18歳未満に対し、同性愛や性転換についての議論を制限する法案が可決された。学校においては同性愛や性転換を助長するとみなされた書物等は生徒に見せることができなくなるという。これに対し、人権団体から批判の声があがっていた。ハンガリーでは現在、この法案を巡って国民が分断されるような状況が続いているが、UEFAはマイノリティー側に立った形となった。

一方、UEFAはドイツ代表GKノイアー(バイエルン・ミュンヘン)が現在つけている虹色のキャプテンマークについては「問題なし」という見解を示した。レインボーカラーはLGBTQの象徴で、一部で「スポーツを政治利用するな」という声が上がっていた。だがUEFAは「これは多様性の象徴で、善意にもとづいて着用されている」と判断。いかなる処罰や罰金も科せられないことになった。加えて23日にミュンヘンで開催されるドイツ-ハンガリー戦では会場のアリアンツ・アリーナが虹色にライトアップされるという。

日本では、なでしこジャパンでも活躍し、現在米女子プロサッカーリーグNWSLワシントン・スピリットでプレーする横山久美がトランスジェンダー(心と体の性が一致しない人)だと公表して大きな話題となった。横山のような知名度のある人物が公表することによって、LGBTQだけにとどまらず「だれでも自分の好きなように生きていっていい」という多様性がより広がればいいなと強く思う。

横山はトランスジェンダーであることを告白した映像の中で、米国のチームメートに「日本ではなかなかカミングアウトしづらい状況がある」という旨を説明したところ「日本ってちっちゃいね」と言われたエピソードも披露している。筆者も先日、「LGBT理解増進法案」が与党・自民党内の了承を得られず、国会提出に至らなかったというニュースを聞いた際、「ほんと日本って小せえな」と感じたしだいだ。UEFAが示した世界の潮流や、横山のカミングアウトがより多くの人々に良い影響を与え、1人1人が生きていきやすい世の中になることを切に願うばかりだ。【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)