名門バルセロナがピンチだ。6月30日で契約満了となっていたアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(34)と5年間の再契約に基本合意したと伝えられているが、現時点でチームはスペインリーグが定めるサラリーキャップ(選手の年俸を含めた総人件費のリミット)を大幅にオーバーする見通し。メッシはクラブ事情を考慮して年俸半減をのんだもようだが、それでも、このままだとメッシだけでなくFWアグエロら今オフ獲得した全選手の登録ができない事態となっている。

スペインリーグのサラリーキャップは、欧州サッカー連盟(UEFA)が導入しているファイナンシャル・フェアプレー(FFP)のルールと似ているもの。簡単に言うとクラブの赤字経営をなくすことを目的としており、赤字額が多ければその分、サラリーキャップは低くなる。

バルセロナはバルトメウ前会長時代に負債が13億ユーロ(約1690億円)にまで膨れ上がった。そのため、19-20年シーズンにリーグ1位の6億7100万ユーロ(約872億円)だったサラリーキャップは、20-21年シーズンには約半額の3億4700万ユーロ(約451億円)に引き下げられた。英デーリーメール電子版よると、今季は1億6000万ユーロ(約208億円)程度になる見通しだという。

そのためバルセロナのラポルタ会長は総年俸の削減に必死だ。バルセロナでは先ごろ、グリーズマンとデンベレの両FWが、日本人やアジア人へ差別的な言動をしたと取れる動画が流出。クラブが「皆様に不快な思いをさせ、非常に遺憾に思う。公式に謝罪する」と声明を出し、2人も謝罪した。ラポルタ会長はそんな状況に乗じて、出来高を含めた年俸が2000万ユーロ(約26億円)にもなるグリーズマンを放出したい意向だ。同FWの古巣アトレチコ・マドリードに移籍させ、トレードでグリーズマンの半額以下でMFサウールを獲得するプランも検討している。デンベレやMFコウチーニョもリストラ対象だが故障続きで移籍先がなかなか見つけられない状況が続いている。そのためまずグリーズマンの放出だけは確実に実現させたいところだ。

今夏のバルセロナはMFアレニャ(ヘタフェへ完全移籍)DFフィルポ(リーズへ完全移籍)FWデラフエンテ(マルセイユへ完全移籍)らを放出してはいるものの、アグエロやFWデパイ、DFエリク・ガルシアら大物を次々と獲得。サラリーキャップの問題は大丈夫なのか? とファンをやきもきさせている。

チームを根本的に健全化させるのであれば、東京五輪にも出場するMFペドリを中心としたチーム作りに完全にシフトし、メッシとの再契約は見送るべきだったのでは、とも思う。一方でメッシのいないバルセロナなんて、と感じてしまうのも確かだ。バルセロナはソシオ(クラブ会員)がオーナーであることを基盤としたスポーツクラブだが、このままだと近い将来、中東などの富豪たちに売却されることもあり得るのではと思ってしまう。【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)