今年12月に、5年ぶりに日本で開催される予定だったクラブ・ワールドカップ(W杯)が他国で行われることになった。

日本サッカー協会(JFA)が「国際サッカー連盟(FIFA)とJFAは、新型コロナウイルスの感染状況およびそれに伴う現在の開催条件について協議を重ねた結果、FIFAクラブワールドカップは2021年12月に日本で開催しないことを決定しました。なお、2021年大会の代替開催地等は、FIFAからあらためて発表される予定です」と発表した。

クラブW杯は05~08年、11~12年、15~16年と日本で開催。16年大会ではJ1王者の鹿島が南米代表アトレティコ・ナシオナル(コロンビア)を準決勝で破り、レアル・マドリードとの決勝に進出。最後は2-4で敗れたものの、柴崎岳の2ゴールで延長戦にまで突入するという熱戦を演じた。

また11年大会では準決勝で当時ネイマール(現パリ・サンジェルマン)が所属していたサントス(ブラジル)と柏が対戦。ゴール右から巻くようにファーサイドのネットを揺らす左足シュートをいとも簡単に決めたネイマールの姿を見て「ああこれが世界レベルなんだ」と実感したものだ。

数々の名勝負を生み出してきたクラブW杯だが、JFAが今回、開催を断念した理由は良く分かる。コロナ禍でスポーツの大会開催どころではないからだ。日本はまだ新型コロナワクチンを2回接種した人数が人口の5割程度。冬には「第6波」が来る可能性も指摘されている。そんな中での開催は大きなリスクをともなう。

と同時に別の疑問が首をもたげるのも確かだ。日本では今夏、クラブW杯とは比較にならないビッグイベントである東京オリンピック・パラリンピックが開催されたからだ。連日、関係者からコロナ感染者を出しながらも最後まで完走した。JFAは当時、東京五輪の開催に反対していただろうか。

日本政府は「五輪、パラリンピックによる感染拡大はなかった」という立場をとり続けている。ならば、たった7チームがトーナメントを行うだけのクラブW杯がなぜ開催できないのか。オリンピックにおける「バブル方式」は穴だらけだったが、7チームによる大会をバブル方式で開催できる能力すら日本にないとは思いたくない。

関係者によると、クラブW杯は以前から「もうからない大会」だったという。欧州、南米の代表が登場する準決勝以降は多くのファンが集まるが、それ以外の試合ではチケットも思うように売れない。コロナ禍に加え、興行的メリットがないのも開催を断念した理由だろう。

日本代表DF吉田麻也は東京五輪の直前、有観客での開催を強く訴えた。オンタイムで競技を見られることが子供たちにも良い影響を与えるというのが吉田の主張の1つだった。

もし今回のクラブW杯が日本で開催されていれば、欧州王者チェルシーが来日する予定だった。欧州選手権で優勝したイタリア代表MFジョルジーニョや同準優勝のイングランド代表MFマウント、ベルギー代表FWルカク、フランス代表MFカンテら、世界のトップスターたちをスタジアムで見ることができる可能性だってあった。

サッカーキッズたちにとって彼らは日本代表に勝るとも劣らない憧れの存在。日本はスターたちを目の前で見ることができる絶好の機会を自ら手放したのだ。【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)