今夏、久保建英の名前とともに日本で知名度を上げたサッカーチームと言えば、マジョルカのほか、レアル・マドリードのBチーム「レアル・マドリード・カスティージャ(以下、カスティージャ)」が挙げられるだろう。

久保はマジョルカへの期限付き移籍前、プレシーズンマッチのアルコルコン戦で今やトップチームで華々しい活躍を見せるブラジル代表FWロドリゴとともに、カスティージャデビューを果たしている。ロドリゴは通常トップチームに参加しているが、選手登録は今でもカスティージャのままである。

カスティージャは元々、RマドリードのBチームではなく、独立したクラブチームであった。1947年よりRマドリードのBチームの役割を果たしていたADプルス・ウルトラというクラブが、1972年より正式にBチームとして登録され、現在のカスティージャへと形を変えている。

「ラ・ファブリカ(工場)」の愛称で呼ばれるRマドリードの下部組織は13カテゴリーで構成され、一番下はプレベンハミン(6~7歳)、一番上はカスティージャ。そしてRマドリードは今シーズン、欧州5大リーグに最も下部組織出身選手を輩出しているクラブとなっている。

また、カスティージャの3つ下のフベニールC(高校生年代の一番下のカテゴリー)で現在「ピピ」の愛称で知られる中井卓大がプレーしているため、一時期はRマドリードの下部組織に2人の日本人選手が在籍していたことになる。

カスティージャの本拠地「エスタディオ・アルフレッド・ディ・ステファノ」はマドリードの空港近くに位置し、マドリードの中心地から地下鉄で30分ほどのところにある6000人収容のスタジアム。

トップチームから下部組織まで全選手がトレーニングを行う練習場「シウダー・レアル・マドリード」内にあり、スタジアム名はクラブの名誉会長であり伝説的選手だった亡きディ・ステファノに敬意を表し名付けられている。

リザーブリーグが存在しないスペインでは、同じリーグ組織にBチームも組み込まれているため、19-20シーズンはプリメーラ(1部)にトップチーム、セグンダB(3部)にカスティージャが属している。

プリメーラに20チーム、セグンダ(2部)に22チームあり、カスティージャがプレーするセグンダBは4グループに分かれ、各20チーム、総勢80チームが属している。

毎シーズン、セグンダに昇格できるのは、レギュラーシーズンで4位以内に入った後の激しいプレーオフを勝ち抜いたわずか4チームと非常に狭き門となっている。また、カスティージャと安部裕葵が所属するバルセロナBは別グループのため「Bチームのクラシコ」が実現するとすれば、それはプレーオフの場となる。

カスティージャが今シーズン、セグンダに所属していると仮定し、来シーズンのプリメーラ昇格の権利を得たとしても、同じリーグにトップチームとBチームが属することはできない規則のため昇格できない。その反対にトップチームがセグンダに降格した場合、カスティージャは自動的にセグンダBに降格することになる。

カスティージャの過去最高順位は1983-84シーズンのセグンダ優勝。しかし当然のことながら、トップチームがプリメーラに属していたため昇格することはできなかった。

また、過去にはBチームの国王杯参加が認められていた79-80シーズンの決勝では、カスティージャとトップチームが優勝を争うという珍事が起こっている(結果は6-1でトップチームの勝利)。さらにこの準優勝という結果によりUEFAカップに出場した。

近年カスティージャは、12-13と13-14の2シーズンをセグンダで戦い、それ以降セグンダBに属し、今季は7シーズンぶりとなるセグンダ復帰を目指している。

昨シーズンはレギュラーシーズンを4位で終え、セグンダ昇格プレーオフに進出するも早々に敗退。そして今シーズンここまで15試合を戦い4勝6分け5敗の11位と思うように勝ち点を積み上げられていない。

カスティージャの歴代監督には、Rマドリードのトップチームで公式戦最多試合数および最多勝利数を誇る伝説的監督ルイス・ムニョスや、ラファエル・ベニテス、アマンシオ、ビセンテ・デルボスケ、ミチェル、ジュレン・ロペテギ、ジネディーヌ・ジダン、サンティアゴ・ソラーリなどが名を連ねている。

そして今シーズンは、クラブの下部組織から17歳でトップチームに上り詰めて、現役引退後に監督として戻ってきたクラブのレジェンド、ラウールが指揮をとっている。

また近年、シーズン途中でのトップチーム監督解任により、当時カスティージャを率いていたジダンやソラーリが急きょ後任を務めるという流れがあったため、ラウールにも将来、トップチーム監督就任の期待がかかる。

カスティージャでは過去にブトラゲーニョやサンチス、カシージャス、ラウール、グティなどの“クラブのレジェンド”たちがプレーしてきた。

そして今シーズンのトップチームでは、ナチョ、カルバハル、カゼミーロ、バルベルデ、ルーカス・バスケス、マリアーノの6選手がカスティージャ出身選手。またヴィニシウスやロドリゴもわずかながらカスティージャでプレーしている。

この中でカスティージャから直接トップチームに昇格したのはナチョ、カゼミーロ(カスティージャ入団後、半年間プレーしてトップ昇格。その後、ポルトへの期限付き移籍あり)、マリアーノ(その後、リヨンへの期限付き移籍あり)の3選手。一方、カルバハル、バルベルデ、ルーカス・バスケスは他クラブへの期限付き移籍を経てトップチームに所属している。

また、他クラブに期限付き移籍しているマジョラル(レバンテ)、アクラフ(ドルトムント)、レギロン(セビージャ)、ウーデゴール(レアル・ソシエダード)、オスカル・ロドリゲス(レガネス)、ルカ・ジダン(ラシン・サンタンデール)などの名も挙げられる。

そのほかではモラタ、マルコス・ジョレンテ、エルモーソ(アトレチコ・マドリード)、パレホ(バレンシア)、ディエゴ・ジョレンテ(レアル・ソシエダード)、ソルダード(グラナダ)、マタ(マンチェスター・ユナイテッド)、カジェホン(ナポリ)、サラビア(パリ・サンジェルマン)、フアンフラン(サンパウロ)など、多くの選手たちが過去カスティージャでプレーしていた。

このような名だたる選手たちを輩出してきたRマドリードの下部組織トップのカスティージャ。今後も新たなスター選手たちがここから育っていくことだろう。【高橋智行】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)

レアルマドリード・カスティージャでデビューした久保(中央)
レアルマドリード・カスティージャでデビューした久保(中央)