ワールドカップ(W杯)カタール大会で日本と1次リーグ同組のスペイン代表は、17日に本番に向けた最後の強化試合となったヨルダン戦を終え、あとは開幕を待つのみとなった。
ルイス・エンリケ監督はこの親善試合で、モラタ、マルコス・ジョレンテ、ギジャモンをコンディション不良、ガヤをけがで起用できず、レギュラーと目されるウナイ・シモン、ブスケツ、ペドリを90分間ベンチに置きつつ、いくつものテストを実施した。
この日のスタメンで特にサプライズとなったのは、ガヤ不在のため本番に向けてベテランのジョルディ・アルバが温存され、本来CBのラポルテが左サイドバックに起用されたこと、そしてアセンシオが偽の9番、調子が上がらずW杯メンバーにギリギリで選ばれたアンス・ファティが左ウイングでプレーしたことだろう。
全てがベストとは言い難い選手たちで臨んだ中、アンス・ファティがすぐさま指揮官の期待に応え、前半13分にアセンシオのアシストから先制点を記録する。その後はスペインがいつも通りボールを圧倒的にキープし、後半にガビとニコ・ウィリアムズが加点し、3-1で勝利した。
ルイス・エンリケ監督は試合後、ポジティブな点としてけが人が出なかったことを挙げていたが、その他にも収穫がいくつもあった。チームとしてはボール支配率70%超えと自分たちの持ち味をいつも通り発揮できたこと、そして20歳以下の選手たちが得点を重ねて懸念された決定力不足を払拭し、21試合連続得点を記録したことだ。
個人に目を向けると、ガビが中盤でゲームをうまくコントロールしたことや、アンス・ファティが復活しつつあること、そして9月に代表デビューを飾ったばかりのニコ・ウィリアムズが戦力として目処が立ったことなど、特に攻撃陣の良さが光った。そんな中、最も大きなニュースはルイス・エンリケ監督が試合後に「別次元」と称していたアセンシオが素晴らしいパフォーマンスを発揮したことだろう。
ヨルダン戦でスペインメディアに最も高い評価を受けたアセンシオは、昨夏の東京五輪準決勝で日本相手に延長戦で決勝点を記録した選手であり、今年6月に1年半ぶりに代表復帰を果たした。
所属するレアル・マドリードでは今季開幕後、バルベルデやロドリゴの活躍により控えに甘んじる時間が続いたが、W杯開幕が近づくとともに、与えられた少ない出場時間をうまく生かし調子を上げてきた。そしてヨルダン戦では最初に偽の9番、後半途中から右インサイドハーフでプレーしフル出場。ルイス・エンリケ指揮下のチームで最多となる9アシスト目を記録し、レギュラー獲りに向け猛アピールしている。
スペインがFIFA(国際サッカー連盟)ランキング7位であるのに対し、ヨルダンが84位だったことで良い点ばかりが目についたが、ネガティブな点もあった。それはW杯予選や欧州ネーションズリーグでも度々露呈した守備時の集中力の欠如。アスピリクエタのミスとも取れる終盤の失点については、当然のことながらスペインメディアから批判を受けていた。
ここに来て、ガヤが最終的にけがでメンバーを外れ、代わりにバルデが招集されるというアクシデントが発生し、問題点を改善できていない守備に若干の不安を抱えてはいるものの、慢性的な懸念事項である決定力不足は解消の兆しを見せている。
また、4-3-3の前線3枚のレギュラーは最近、フェラン・トーレス、モラタ、サラビアが務めていたが、さらにアセンシオ、アンス・ファティ、ニコ・ウィリアムズといった選手たちが加わり、ダニ・オルモがけがから復帰したことで攻撃陣の選手層が厚くなった。このことは、ルイス・エンリケ監督が今大会の目標として「決勝に進出し7試合全てに勝つこと」を掲げ、優勝を狙うチームにとって朗報となっている。
ルイス・エンリケ監督はまた今大会の優勝候補について、「誰もブラジルとアルゼンチンを除外することはできない。現王者のフランスもそのひとつであり、ドイツを優勝候補でないと言える人は世界中にいないだろう。そしてスペイン、イングランド、オランダ、ベルギーなどもそうだ」と自国を含んでいたが、実際にスペインを優勝候補と呼ぶことはできるだろうか?
近年の成績を振り返ってみると、昨年の欧州選手権は準決勝でイタリアにPK戦の末に敗退、欧州ネーションズリーグは決勝でフランスに1-2の惜敗、W杯予選は首位通過。そして今年新たにスタートした欧州ネーションズリーグでは1次リーグで同組のポルトガルを蹴落として再びファイナルフォー進出と順調な歩みを見せており、優勝候補に入ってもおかしくない十分な実績を残している。
スペインは23日のコスタリカ戦で12年ぶり、2回目の優勝を目指す戦いをスタートし、27日にドイツ、来月1日に日本と対戦して1次リーグを終了する。初戦ではヨルダン戦で出番のなかったウナイ・シモン、ブスケツ、ペドリ、モラタの先発入りが予想され、最多8人を輩出したバルセロナのメンバー主体のチームになる可能性が高そうだ。そんな中、ルイス・エンリケ監督が好調アセンシオをスタメン入りさせるのか、新たな選手が加わるのかが非常に楽しみとなる。
(高橋智行通信員)





