<欧州選手権:スペイン0-0(4PK2)ポルトガル>◇準決勝◇27日◇ドネツク

 ポルトガルFWクリスティアノ・ロナルド(27)の願いは届かなかった。2大会ぶりの決勝進出を目指し、準決勝で王者スペインに挑み、0-0の末、PK戦2-4で敗れた。積極的に前に出て、厳しい寄せで相手を苦しめる一方で、得点もできなかった。PK戦では5番手のキッカーとして準備していたが、出番は回って来なかった。主将として臨んだ今大会は1人でチームを引っ張ってきた。「決勝進出に値したチーム」と誇りを持ちつつ、大会を去った。

 最後はPKを蹴ることさえできなかった。既に2人が失敗。自らのキックでチームを鼓舞することも、流れを引き戻すことも、機会がなかった。スペインの赤い歓喜の輪も視界に入らないように、ロナルドはぼうぜんと立ち尽くした。

 「がっかりだ。決勝進出に値するチームだった。ただ運がなかった」と振り返った。試合開始直後から積極的に攻め、前線からプレスを掛けて相手のパスワークを乱し、ゴール前では全員が体を張った。「90分間は我々が上回っていた」とベント監督が自画自賛する内容で、世界王者を追い詰めかけた。

 一方で、ロナルドも相手守備陣に執拗(しつよう)にマークされた。何度も倒れて、背番号「7」の文字は泥と芝にまみれた。FWナニへのクロスは合わず、前半31分の低いシュートは右に外れ、後半44分に速攻から持ち込んでのシュートはバーの上。延長戦でこの日4度目のFKも不発に終わった。

 PK戦ではわずかなことが流れを左右する。ポルトガル3番手の際、DFアルベスがスポットに向かい、ナニが追いかけた。アルベスが順番を間違えていた。ナニは成功させたが、動揺か、集中力が途切れたか、アルベスの球はクロスバーに当たって外れた。直後にスペイン5番手セスクがポストに当てながらゴールに入れ、勝負は決した。

 ベント監督は「ロナルドが蹴っていたら、また違っただろう」と言い、相手GKカシリャスは「ロナルドが蹴らずに終わって助かった」と明かした。これまでロナルドは1番手も3番手も5番手も務めている。エースがどこで蹴るべきか、同監督は「決断に悔いはない」としたが、力を引き出せなかったのは事実だ。同時にカシリャスを威圧できるのが、1人しかいなかったのも現実だった。

 今大会3得点を挙げて、チームは4強入り。「チームのために自分ができたことには満足」と、主将らしく話した。2年後のW杯に向け、まだチームを引っ張る立場だ。「決勝ではスペインを応援するよ。友達がいるからね」。Rマドリードの一員に戻り、再出発する。戦いは終わらない。