<クラブW杯:マンチェスターU(イングランド)1-0LDUキト(エクアドル)>◇21日◇横浜◇決勝

 試合を決めたのは、またしてもルーニーだった。針の穴を通す正確さで、LDUキトの堅守を破った。後半28分、ペナルティーエリア左で、C・ロナウドからのパスを受けた。2人のDFがピッタリふさぐシュートコースにも、ひるむことはない。ゴール右隅を目がけて右足を振り抜く。次の瞬間、サイドネットとスタジアムが揺れた。

 18日の準決勝G大阪戦は、負傷(個所は未公表)のため途中出場。16分で2ゴールを挙げ、決勝へ体調は万全だった。ファーガソン監督からは「お前は疲れていないから期待してるぞ。『何か』をね」と、キーマンに指名されていた。後半4分、DFビディッチが相手へのヒジ打ちで一発退場。コンビを組むFWテベスが交代を余儀なくされ、使命を悟った。「退場で厳しくなったが、チームは多くの好機をつくっていた。勝てると思っていた」。ゴールの予感を、現実にした。

 イングランド代表として出場した06年W杯では、ポルトガルとの準々決勝で相手選手の股間(こかん)を蹴り、一発退場。敗北の責任を一身に背負った。代表とクラブで舞台こそ違えど、それ以来の世界挑戦で雪辱を果たした。しかも、3得点で得点王、大会MVPのおまけ付き。自分の手、いや足でつかんだ頂点だ。「試合後に携帯電話を見たら、友達からメールが入っていたんだ。『お前は世界王者だ』ってね。信じられないよ」。今度は胸を張って、母国へ帰ることができそうだ。【森本隆】