広島が初の世界4強に進出した。アフリカ王者マゼンベ(コンゴ)に完勝。後半33分に途中出場の新星FW浅野拓磨(21)が大会初ゴールで勝負を決めるなど、DF塩谷の2戦連続の先制弾、DF千葉の追加点と最後まで圧倒した。日本勢の4強進出は11年柏以来4クラブ目。16日の準決勝(ヤンマー)で南米王者リバープレート(アルゼンチン)と対戦する。

 アフリカ王者にとどめを刺したのは、広島の「新スター」だ。2点リードの後半33分。ゴール前に駆け上がった浅野は、ミキッチの右クロスを頭で合わせた。エース佐藤との交代で同30分にピッチに入ってから、わずか数分で決めた大会初ゴールだった。広島の快足FWが、世界の舞台でも「分速」で結果を出した。

 「岳人(野津田)とはプロ1年目からやってきて、世界の舞台で一緒に戦いたかった。ケガで出られなくなったのは残念。本人が一番悔しいだろうし、出られなくなった選手のために、どうしても結果を残したかった」

 仲間に贈る得点だった。10日の開幕オークランド戦で、同い年のMF野津田が負傷退場。右膝内側側副靱帯(じんたい)損傷で全治8週間の重傷を負った。広島だけでなく、16年リオ五輪を目指すU-22(22歳以下)日本代表でも互いに競い合ってきた仲だ。今大会だけでなく、年明け1月にある16年リオ五輪のアジア最終予選出場も絶望。同じ五輪を目指す浅野が、野津田が涙を流すのを見て心に期するものがあった。

 7人きょうだいの三男坊は、試合前に必ず行う儀式がある。会場へ向かう直前に、宿舎から家族にテレビ電話をすることだ。「そうすることで僕が(家族から)パワーをもらえる」。この日は三重県の実家から車で約3時間かけて、両親ときょうだいが訪れていた。いつもは後半15分前後からの出場だが、リードする展開だったことで少し遅い同30分からとなり「せっかく見に来てくれたのに、もしかして今日は出ないかな? と思いました。短い時間で点が取れて良かった」と笑った。

 前半44分にDF塩谷が開幕戦から2戦連発、後半11分に再びCKからDF千葉が頭で2点目。DF陣が奮闘し、最後は浅野が勝負を決定づけた。初の4強進出で、中2日で南米王者リバープレートとの準決勝が待つ。その先にはバルセロナとの対決が実現する可能性もある。強い、強い広島の夢は果てしなく広がる。【益子浩一】

 ◆クラブW杯 国際サッカー連盟(FIFA)主催のクラブ世界一決定戦。今年で12回目。欧州、南米などの6大陸王者と開催国リーグ覇者の7チームがトーナメント形式で争う。16年も日本開催。