シュツットガルト細貝萌は気配りの人だった。「本当に力になってもらっている。いい先輩と一緒に同じチームでできているというのは僕自身うれしいことですね。通訳してもらってます。本当にすごいです」。同じクラブに移籍してきた当初の浅野拓磨はそのサポートに感謝していた。ヘルタ時代の細貝は原口元気を気にかけていた。結果やプレーに一喜一憂せず、大きな成功を求めて戦うことの大切さを知っている。一連の気配りは、心の強さの表れと言えるかもしれない。

 複数の日本人選手が出場した試合後はメディアが順番に取材できるよう配慮し、他の選手に「先にインタビューやってるから、シャワーしてきていいよ」と声をかける。「ベテランとして、チームの成功に何が一番必要かを考えるのは重要だから。個人的なフラストレーションはない。自分のエゴは後ろにおいてあります」。出場機会に恵まれない時期も腐らず、練習で手抜きは一切なかった。

 優勝、昇格を狙うチームにいながら出場機会を求め、3月には柏を新天地に選んだ。その決断を悪く言う人はクラブにいない。ウォルフ監督は「模範的なプロ選手」、シンデルマイザーSDも「ハジメは温かい人間で、トッププロ選手」と別れを惜しんでいた。プロは結果が大事だが、チーム、クラブ、ファンに愛された細貝の戦いもまた、1つの成功だった。(おわり)