サッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会の日本代表DF酒井高徳(27)が23日、所属先のハンブルガーSVに合流するため、ドイツへと出発した。

 「リラックスできた期間でした。いつも7月頭…梅雨が明けたら(ドイツへ)帰っているイメージが強かったですけど、ど真ん中までいられた。夏らしいことをずっとしていなかった分、今回はバーベキューなりいろいろ夏っぽいことができたので、久々にうれしかった」。

 充電をたっぷりしたようで、端正な顔に笑みがこぼれた。

 ベルギー戦から一夜明けたロシアの合宿地カザンで、長谷部誠や本田圭佑と並んで日本代表からの引退を表明した。まだ27歳。予想外の宣言だった。改めて、その思いを明かした。

 「本当に、自分の中で一生懸命駆け抜けてきた代表での8年間だと思っていますし、常に日の丸を背負ってピッチに立ちたいという思いを第一優先に活動してきました。その中でW杯に2大会行かせていただいたけど、自分が思い描いていた自分が、その場にいなかった。それが2大会通してあったということが、数ある理由の中の1つです」。

 左右のサイドバックをこなせる、右の酒井宏樹と左の長友佑都の貴重なバックアップ-。それが、現代表での立ち位置だった。

 周囲は思うだろう。まだ27歳。これからまた、レギュラーを獲得するチャンスはいくらでもある、と。だが、酒井高は自分自身を冷静に見つめていた。

 「本当に単純に、今まで自分がやってきた(バックアップの)立場を次の4年間でもう1度やる可能性を考えた際、そこのポジションは(4年後は31歳になる)僕の歳でやる必要はないのかなと思う。いるだけでも経験できる日本代表のポジションは、若い選手がどんどん感じていってほしい。自分はすごくシビアに、代表での自分の立場も考えていました。やっぱり、結果を残せなかった選手というのは、居続けるべきではないかなと。自分の中でそう思い至ったので、こういった決断になりました」。

 そこには「日本代表」という場所を真剣に考えるがゆえの決断があった。

 「寂しいですよ。でも、今言った理由の1つとして、自分が結果を出せなかったということもある。そこは悔いしかない。結果を出したかった自分が、ないと言ってしまうとウソになる。そこで結果を出せれば良かったなと思うシーンが非常に、今でも思い浮かんでくるのがある(苦笑)。ただ、その(代表引退の)考えについてはきっぱりと、自分の中で決心をつけた。覆す発言をするほど(代表は)甘い場所じゃないし、180度変わるなら、始めから発言しない。そんな簡単な場所じゃないし、そんなに軽く、その場所を見ていません」。

 言葉の端々から伝わる代表へのリスペクト。次の世代へと託す願い。それらを胸に、日本代表という目に見えない重責を肩から下ろした。

 所属クラブへと、情熱を注ぐベクトルを変えた。今季、ハンブルガーSVは長い歴史上初めて、ドイツ2部で戦う。もう、そこだけを見る。集中する。

 「幸運なことに出て行った選手は非常に少なく、昨季のベースを保ったまま試合ができる。かといっても、1部と2部で、戦い方や違う難しさがあると思う。そこにいかに早く慣れるか。目標はもちろん1シーズンで上がること。そこに全力を懸けていきたい」。