横浜FCのFWカズ(三浦知良、52)が30日、横浜市内でJ3のY・S・C・C・横浜との練習試合で実戦復帰した。後半18分から約30分間プレーして、健在ぶりを見せつけた。

Jリーグで数々の年長記録を持つカズについて、カズがブラジルで初めて入団したサントスで監督を務めていたぺぺ氏(84)、カズと同期でプロになった元ブラジル代表セザール・サンパイオ氏(51)が日刊スポーツのインタビューに応じ、その偉業をたたえた。【岡崎悠利、エリーザ大塚通信員】

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恩師は「カズは元気か?」と温かい笑みを浮かべた。今季も現役でプレーしていることを伝えると、ぺぺ氏は驚き、目尻にしわを作った。「サントスにいる時も、体のことを誰よりも考えていたからね。60歳までプレーするのかな」。かつて監督としてグアルディオラやペレを指導した名将はそう言った。

カズが初めてサントスの練習場に訪れた時のことを今も覚えている。「みんな『あの日本人は何者だ?』と見ていたね。初めてのことだったから」。当時は差別的な見方も残っていたことを認め、こう続けた。「サントスは下部組織から育てるクラブ。日本人ともなれば、本当に特別な選手でなければならなかった。彼は我々を認めさせた」。国籍という壁を越え、1人の選手としてポジションを勝ち取った。

同期としてプロ契約をしたサンパイオ氏は当時をなつかしむ。「休日の遊び場はビーチだけだった。お金もなかったから。ボールを蹴ったり、女の子を口説いたりしてね」。ある時にふと見た、砂浜から水平線をじっと見つめるカズの姿が脳裏に残っているという。

17年に日本でカズと再会したサンパイオ氏。50歳を過ぎても現役を続けているカズについて、戦友だからこそ言った。「今はグラウンド外の方が、人を助ける力があるだろう」。そして続けた。「クラブは、若い時に引退することを子どもの時から教えないといけない。選手にとっては難しい決断だから」。ぺぺ氏は「ブラジルでは考えられないこと。18歳の動きはできないから」とした。サッカー文化が日本と異なるからか、今もピッチに立つカズの心理は想像がつかないようだ。

カズは今でも、本気で日本代表を目指している。そうを伝えると、サンパイオ氏は少し考えて切り出した。「数日前に、現役時代の仲間と食事をした」。その食卓に、サッカーの面影はなかったという。「家を買ったとか、話すことはサッカーとは関係ないものだった。カズは今でも、サッカーがうまくなりたいと思い、W杯という夢を持ち続けている。(現役続行に)反対はできないね」。またぺぺ氏は「50歳を超えてプレーするのは、スーパーマンじゃないと無理だ。でも、彼が言うのなら力になりたくなるね。私が監督ならベンチに置いて、20~30分起用することを考える」と話した。

サントスに来たカズが自分たちの価値観を打ち破ったように、彼はまた新しいなにかを見せてくれるのかもしれない-。そんな期待が、2人の言葉にこもっていた。