レアル・マドリードは敵地でバレンシアに0-1で敗れた。ブラジル代表FWビニシウス(22)が試合終了間際に相手選手への暴力行為で退場となった。ビニシウスは試合中にバレンシアサポーターから人種差別的な侮辱を受けていた。後半25分過ぎにはビニシウスが特定の人物を指さしながらアピール。試合は10分近く中断するなど大荒れだった。

試合後、ビニシウスは自身のツイッターで「これは初めてでも、2回目でも、3回目でもない。スペインリーグでは人種差別は普通のことだ。大会の運営側はこれが当たり前だと思っていて、連盟も対戦相手もそれを助長してしまっている。ごめんなさい。ロナウジーニョ、ロナウド、クリスティアーノ、メッシのものだったラ・リーガは今や人種差別主義者たちのものになっている」などと記した。

ビニシウスに対する人種差別的な行為は今季、アウェーの会場で何度も起こっていたが、バレンシア戦では試合展開的にサポーターがヒートアップ。最終的に目に余るほどの事態に発展した。レアル・マドリードのアンチェロッティ監督(63)は「ビニシウスはずっと侮辱され、最後にレッドカードが提示された」と怒りをあらわにした。

スペイン紙アスによると、同監督は試合後の記者会見で次のように語っている。

「試合中に会場の雰囲気が非常に熱くなり、とても悪くなっていたので、ビニシウスにプレーを続けたいかどうかを確認したんだ。人種差別的な雰囲気があるからといって、彼を交代させなければいけないという考えは、私には正しいとは思えない。プレーが良くない場合は選手を下げる必要があるが、人種差別を理由に選手を交代させることなど今まで1度も考えたことがない。今日起こったようなことはこれまで何度もあったが、あんなにもひどいのは初めてだし、許し難いことだ。問題を抱えているのはビニシウスではなくスペインリーグの方だ。彼は非常に深刻な問題の犠牲者になっている。何をすべきか考えるのに私が最適な人間ではないが、あんな状態ではサッカーなどできない。私はたとえ自分たちが勝ったとしても、同じことを言っていただろう」と苦言を呈した。

続けて「あまりにも深刻な事態だった。我々が攻めている時にボールをピッチに投げ込まれ、ビニシウスはずっと侮辱され、最後にレッドカードが提示された。スペインリーグは素晴らしいチームがあり、雰囲気の良いリーグなので私はとても悲しいし、あれを止める必要がある。我々は今、2023年にいるんだ。人種差別など存在してはいけない。唯一の方法は試合を中止することだ。確かに(人種差別に対するスペインリーグの)プロトコルがあるかもしれないが、我々は家に帰らなければいけない」と語り、もし人種差別的な問題が発生した場合、プレーを放棄すべきであることを強く訴えた。

また、アンチェロッティ監督は「彼らは『猿、猿、猿』と叫んでいた」とビニシウスに対してスタンドから浴びせられていた言葉を具体的に説明し、嘆き悲しんでいた。(高橋智行通信員)