陸上のダイヤモンドリーグ第2戦の上海ダイヤモンドリーグ大会が12日、中国・上海市の上海スタジアムで行われる。8種目に昨年のロンドン世界陸上金メダリストがエントリーした。なかでも注目は男子100メートルのジャスティン・ガトリン(36=米国)で、ポスト・ボルト候補の選手たちとどんな戦いを見せるのか。その100メートルには日本から桐生祥秀(日本生命)も出場する。

 ガトリンは自己記録の9秒74を、3年前の2015年5月にマークした。当時、すでに33歳。ウサイン・ボルト(ジャマイカ)の世界記録が100メートル、200メートルとも23歳のシーズン(2009年)だったことを考えると、驚異的に息の長いスプリンターといえるだろう。

 リオ五輪後はガトリンも下り坂に入ったと思われていたが、ボルトの引退レースである昨年のロンドン世界陸上100メートルに勝ってしまった。2度のドーピング違反を犯した選手ということでスタンドからはブーイングを浴びたが、ガトリンは自身がやり遂げたことに感涙を流した。

 12年ぶりの世界陸上制覇。ボルトの時代が長く続いていたが、ガトリンはその前と後で勝つ偉業を成し遂げたのだ。ボルトから「君は勝者に値する」という言葉をかけられたことを明かし、「ウサインがいたからこの年齢まで走り続けられた」と謙虚に語った。

 そのガトリンも、ロンドン世界陸上以降は精彩を欠く。

 昨年は世界陸上後に1レース(100メートル)に出たが、格下の選手たちに敗れて4位。今年も3月に150メートルを走って4位だった。体力だけでなく、モチベーションの低下を指摘する声も出てきた。

 上海でガトリンに挑むのは、ロンドン世界陸上200メートル金メダリストのラミル・グリエフ(27=トルコ)と、15年世界陸上・16年リオ五輪とボルト・ガトリンの2強に次いで連続銅メダルを獲得しているアンドレ・ドグラス(23=カナダ)、そして地元・中国で唯一の9秒台を持つ蘇炳添(29)たち。

 今月4日のダイヤモンドリーグ・ドーハ大会200メートルで敗れたグリエフ(3位)とドグラス(6位)よりも、蘇に打倒ガトリンの可能性が感じられる。昨年の上海大会の優勝者で、ロンドン世界陸上でもアジア人選手として唯一決勝に進出した。今年は世界室内60メートルで銀メダルと、得意のスタートダッシュに研きがかかっている。

 ライバルたちにどこまで闘争心を持つことができるか。36歳のガトリンが今季も世界のトップを走り続けるには、上海のレースが重要になりそうだ。

 ◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、一昨年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していた。

 昨年からシステムが変更され、ファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会を実施し、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ優勝者となるチャンピオンシップ形式になった。

 各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4~6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計上位8人(種目によっては12人)がファイナル大会に進出。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈されるのに加え、来年の世界陸上への出場権が得られる。

 出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国毎の出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。