全国高校総体・陸上女子100メートルで連覇を果たした御家瀬緑(恵庭北3年)が準決勝でマークした11秒50は日本高校歴代2位。日刊スポーツでは3回連載「スプリンター御家瀬 強さのヒミツ」と題し、レースを分析したデータや関係者の証言、人物像を通して強さに迫る。

  ◇   ◇   ◇  

自身を客観視し、自ら考え、進む。その繰り返しが、足踏みのない成長につながった。道高校記録を更新した4月の織田記念後、話が昨年の躍進に及ぶと「去年の自分じゃ変わりになる人はたくさんいた」と即答した。総体を制し、日本選手権で4位、アジア大会で日の丸を背負っても「喜び」より「悔しさ」を感じていた。

日本代表の女子リレーヘッドコーチを務める瀧谷賢司氏(62=大阪成蹊大監督)は「自分のことを見つめて考えている。厳しさがある」という。高校でトップに立っても、卒業後の進路で環境適応に苦しむ選手について、瀧谷氏は「自分で考える力、見つめる力、動きを探る能力が、与えられるままで自分発信ではないのかも知れない」と指摘。御家瀬は高校在学中に、そこをクリアしている強みがある。

今季の100メートル全14レースで唯一日本人選手にトップを譲ったのが日本選手権準決勝の土井杏南(23=JAL)。その土井の印象は「ラウンドを重ねるごとに勝負強さが増して素晴らしい」。瀧谷氏も「予選の動きは良くなかったが、次の日は回復していた。トータル的な体力に加え、修正できる総合力がある。なかなか高校生にはできない」という。

身体的な資質を磨き上げる理解力、判断力、行動力。課題を発見、自覚すると、練習も自分で考えアレンジする。指導する中村宏之監督(74)が何度も口にする「利口さ」が成長を支えている。【浅水友輝】

◆風速と御家瀬のタイム 追い風2・0メートルを超えると記録は公認されない。今季の御家瀬は追い風1・9メートルと好条件の織田記念で道新11秒54を出し、約1カ月の総体札幌地区予選は0・2メートルの向かい風で11秒57。5日の総体も自己新11秒50は追い風1・2メートルの準決勝で記録したが、向かい風0・1メートルの決勝でも11秒51。どんな条件下でも好走している。