16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)男子50キロ競歩銅メダリストの荒井広宙(32=富士通)が28日、オンラインで報道陣の取材に応じた。

東京五輪の代表枠は残り1。来春の日本選手権(石川・輪島)が選考会となる。もともとは今年4月の予定だったが、五輪の延期に伴い、選考会も先延ばしとなった。昨年8月に故障もあった荒井は「少し準備期間が欲しかった。それを考えると、来年の4月にずれたことはプラスだなと思う。やれるべき練習を淡々と積み重ねていく」と話した。今月上旬にも左足甲の炎症が出たが、「9割以上よくなっている」という。予定していた来月の全日本実業団対抗選手権(埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場)の男子5000メートル競歩は念のため回避するが、大事ではない様子だった。

実家の長野県に帰省した時には、家族が東京五輪の開催に懐疑的だった。「それがある意味、一般の人の意見なのかな」とも思った。ただ、アスリートとしてはスポーツの祭典が開催されることを信じて準備を進めていく。「モチベーションに左右されるのはよくない。自分の力ではコントロールできない。やるべきことは変わらない。1年の準備期間をもらえた。基礎的な持久力、もっと効率的なフォームも身に着ける。高速化に対応できるスピードもつけられるように、継続した練習をしていきたい」と話した。

リオデジャネイロ五輪の翌年の世界選手権(ロンドン)でも銀メダルを獲得した。しかし、昨秋の世界選手権(ドーハ)は代表を逃した。その舞台では同じ富士通の鈴木雄介(32)が悲願の金メダルに輝いた。荒井は「うれしい気持ちでいっぱいになったが、一緒に出て戦いたかった。身近に世界で戦っている。先輩、後輩がいる。東京オリンピックへ向けて、一層力をつけていきたい」と決意を込める。4年前にオリンピックで日本競歩界にオリンピックの初メダルをもたらした男も、今やチャレンジャー。モチベーションに苦しんだ時期もあったが、もう意欲に満ちている。強力なライバルと切磋琢磨(せっさたくま)しながら、世界のトップへと歩んでいく。

【上田悠太】