東大医学部6年生が大学日本一に輝いた。内山咲良(23)が13メートル02で初優勝を飾った。5月の関東学生対校選手権に続き、頂点に立った。

追い風1・0メートルだった1回目に従来の自己ベストを2センチ更新。その記録は抜かれることなく6回目へ。「抜かされるかも…」。12メートル95で2位だった高良彩花(筑波大3年)の最終跳躍を祈るように見つめた。ただ、自身の記録には届かず、悲願が決まった。最後に12メートル86のジャンプを見せると、スタンドにお辞儀。その後、日本一の実感がじわじわとこみ上げ、ガッツポーズをした。

「自分に陸上の才能があるとは思っていない。でも、才能がないと諦める前に、やることはすごくたくさんある。その意味では、最初からすごいわけではなかったけど、ここまで来られたのは何か他の人にも道しるべになったかな」

そう控えめに喜んだ。ホップ、ステップ、ジャンプと強くなったわけではない。地道に自分と向き合い、成長を続けた。また「文と武は別物だと思っている。どちらかと言えば、陸上を完全に優先した大学生活」とも。そう簡単に言うが、5年生の時から病院実習が始まるなど、一般的な大学生に比べれば、多忙なのは間違いない。今後、競技を続けるかは「考え中」だ。

進学校の筑波大付中1年から陸上を始めた。「小学校でやや足が速く、球技は得意ではない」との理由だ。筑波大付高では女子走り幅跳びで全国高校総体にも出場。東大受験指導専門塾「鉄緑会」などで猛勉強し、日本最難関の東大、しかも医学部の理三に現役合格した。走り幅跳びの記録が伸び悩み、大学3年から三段跳びにも挑戦。そこから本格的に練習を開始した。

自ら提案し、東大のユニホームのカラーも変えた。5年時に下は淡青色から黒に。理由がある。生理の時ににじむことがあり、不便さを感じていたという。他の部員にもアンケートを取り、改善を施した。そのエピソードにも実行力がにじむ。

来年2月には医師国家試験が待っている。合格した後、2年間の研修医を経験し、医師の道を歩む。将来は「目の前で困っている人を助けたい」との思いから救急科か、スポーツ経験が生かせる産婦人科などを考えている。「何度も壁にぶち当たり、乗り越えてきた6年間だった。どんな結果になるか分からないものにも計画を立てて、積み重ねていく。そういうことは今後の人生にもあると思う。粘り強さは生きてくるのかな」。まさに究極の文武両道。それを成し遂げたジャンパーはしみじみ話した。【上田悠太】