陸上男子100メートルで新潟県高校記録の10秒36を持つ鶴巻陽太(三条3年)が今春、早大に進学してステップアップを図る。

昨年5月の新潟県高校総体準決勝で従来の県高校記録を0秒01短縮したが、高校最後のシーズンは不満足に終わった。春からの左臀部(でんぶ)故障が響き、準決勝で敗退したインターハイ以降の大会は出場回避した。その悔しさをバネに大学で飛躍を誓う。

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鶴巻には、もう受けるべき授業はない。それでも連日、通学。三条高のトレーニングルームで早大入学に備え、パワーアップに取り組む。上半身と股関節周辺を重点強化。エアロバイクもこいでいる。「高校最後の年にケガをして、あまりいい結果を残せなかった。最後は悔いが残る」。大半の同級生は大学入試へ猛勉強中だが、鶴巻はすでに大学進学後の爆発する準備を整えていた。

今春から先輩となる関口裕太(東京学館新潟=早大1年)が22年に10秒37をマークして県高校記録を26年ぶりに塗り替えた。鶴巻は翌23年にあっさりと0秒01更新している。ところが、春先から抱えていた左臀部の痛みは引かなかった。準決勝で敗退したインターハイ後は、すべて大会出場を辞退。だからこそ、目指すのは春からのスタートダッシュだ。「座骨神経周辺の筋肉が癒着していた。昨年12月に、それを引き剥がす注射をした」と痛みの原因を取り除き、大学4年間へ憂いはない。

新潟・七谷中時代は卓球部に所属。中学に陸上部はなく、部活を終えた後に1人で実家周辺を走ってきた。特別天然記念物のニホンカモシカが姿を現すほど自然豊かな土地で練習してきた野生児だ。遠山和志監督(52)が「入学時からただ者じゃなかった。走るフォームは逆に勉強になった」と評す鶴巻の当面の目標は自己記録突破と県記録10秒25の更新で、インカレ優勝も狙う。「まだ憧れ。届かない」という日本代表も視界に入っている。【涌井幹雄】

◆鶴巻陽太(つるまき・ようた)2005年(平17)4月20日、新潟・加茂市生まれ。陸上は七谷小2年から加茂ジュニアで開始。七谷中では卓球部ながら、陸上の各大会に出場。中学での100メートルベスト記録は11秒07。高2でインターハイ6位、U18日本選手権6位。173センチ、63キロ。血液型A。