今夏のパリオリンピック(五輪)マラソン代表の一山麻緒(26=資生堂)が1時間45分21秒で優勝したものの、表情は晴れなかった。

パリ本番は起伏のあるコースとあり、勾配の激しい青梅路で調整。スタート時の気温が13・5度と例年を上回る暖かさとなったこともあり、30キロ(男女混合)の日本記録(1時間38分35秒)とは7分近くの差が開く結果となった。「3キロ過ぎから苦しい走りになってしまった。思っている以上にタフなコースだと感じた」と受け止めた。

約1年ほど前から「右足が抜ける」という症状に苦しんでいると告白。「うまく蹴り出しができない。難しい状況が続いている」。万全ではない中、昨年10月のパリ五輪代表選考会マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で2位に入り、2大会連続の五輪切符をつかんだが、「本来の自分の心地よい走りができていない」と神妙に打ち明けた。

不調ゆえの葛藤も吐露した。1月の大阪国際女子マラソンでは、1学年先輩の前田穂南が日本記録となる2時間18分59秒をマーク。「涙が出るくらい感動した」と感じ入ったが、同時に「今の自分は思うような走りができずにもがいている状況が長く続いている。『次は私も』という気持ちにはならなかった」という。

ただそれでも、パリ本番は刻々と迫る。この日が五輪前最後のレースとなる可能性を示唆しつつ、「パリまでには自分が思っている走りを取り戻したい」と力を込める。今後は合宿での走り込みなどで調整を進める。

「ケガなく練習を積んでいけば自信にもつながると思う。『レースが楽しみ』という気持ちでスタートラインに立てば、良いパフォーマンスが出せると思う」

日本女子歴代6位の記録を保持する実力者。自信をもってパリの舞台に立てるよう、心身を鍛えていく。【藤塚大輔】