今夏パリ五輪のマラソン代表選考が10日に終了し、男女各3人の代表が出そろった。

女子最後の1枠は前田穂南(27=天満屋)に決定。2時間21分18秒で優勝した安藤友香(29=ワコール)にも、自らが持つ日本記録2時間18分59秒を破られず、2大会連続で五輪切符を手にした。前回から導入している選考方法については、日本陸連でマラソン強化に携わる瀬古利彦氏(67)と強化委員会の高岡寿成シニアディレクター(53)ともに手応えを示した。

選考会を全て終え、女子は設定記録2時間21分41秒を前田、安藤、鈴木亜の3人が上回った。瀬古氏は「前田選手の衝撃的な日本記録。あれが今回の記録の突破につながってるんじゃないか」と1月の大阪国際女子での好走を絶賛。目標が大幅に上方修正され「女子のレベルが上がったんじゃないか」と声も弾んだ。

延期前の20年東京五輪選考に向けて始まったマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)を今回も導入し、男女各3人を選出した。10月のMGCでは、一発勝負で勝ち切る勝負強さとともに、暑さへの対応力も求められる。昨秋は雨中のレースでスタート時の気温14・5度と思惑とは外れたが、高岡氏は「夏の暑い中、しっかり練習が積めたからこそMGCで結果が出せた。その時期に積み上げた力、知恵があるなら、たとえパリで暑くても結果を残せるはず」と評価した。

MGCでは勝負強さを持つ上位2選手、最終3枠目では好記録を持った選手が選出される。メダル獲得を目指すこの方式に、高岡氏は重ねて太鼓判を押す。「私たちが望んでいる選手が代表に内定した。仕組みがどうかはパリを見てからでないと分からないが、限りなく100点に近い」と。

パリは、スタートからゴールまでの累積標高差438メートルと起伏が激しい難コースで知られる。前田が日本女子初の2時間18分台をマークしたが、世界記録は2時間11分53秒。差は大きいが、瀬古氏は「五輪は記録会ではなく、プレッシャーもかかる」と筋書き通りにはいかないとも分析する。

「前田選手は4年前のMGCを暑い中、独走で走っていた。一山選手も前回の東京五輪でしっかり入賞している。鈴木選手はまだ分からないけど、若さでしっかり走り切ってほしい」。それぞれのポテンシャルに期待を寄せ、五輪での躍動を願った。【竹本穂乃加】

◆パリ五輪マラソン代表 男子は大迫、女子は一山と前田が2大会連続の代表。前回の東京五輪は男女6人全員がマラソンでは初代表だったが、今大会は経験者と初出場が各3人の陣容となった。自己記録の平均タイムは男子が2時間7分1秒で、前回より3秒短縮。女子が2時間21分12秒で、前回より3分4秒も短くなっている。補欠は男子がMGC4位の川内、女子が同3位の細田となった。