陸上の世界選手権東京大会(国立競技場)が21日に閉幕した。同日の男子400メートルリレー決勝で日本は38秒35で6位となり、19年ドーハ大会以来6年ぶりのメダル獲得はならず。予選と同じく1走から小池祐貴(住友電工)-柳田大輝(東洋大)-桐生祥秀(日本生命)-鵜沢飛羽(JAL)で臨むも、2連覇した米国に1秒06差をつけられた。
男子100メートルで10秒00の元日本記録保持者の伊東浩司氏(55)は、海外勢の潮流が変化していると指摘。その上で世界基準に視線を上げる必要があると語った。【取材・構成=藤塚大輔】
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日本は減速の少ない伝統のアンダーハンドパスを遂行し、大きな失敗をしたわけではなかった。それにもかかわらず20日の予選からタイムを0秒28落とし、加速しにくいオーバーハンドパスの国に離された。
外側の8レーンだった予選と比べ、決勝は前に走者がいるケースが多い4レーンだったことも影響したと思うが、実力差が浮き彫りになった印象だ。今回の結果は、日本にとって教訓としなければならない。
まずは海外勢のリレーへの向き合い方が変化しているという実情がある。私の現役時代にはメンバーが大会に集まってから出走順などを決めていたようだが、14年にリレー種目の世界一を決める「世界リレー」が新設されてからは各国も力を入れている印象だ。
例えば2連覇した米国は、今年5月の世界リレーで走ったベドナレクとリンジーを、今大会決勝でも2-3走で起用。銀メダルのカナダにいたっては、4人の出走者も走順も同じだった。
翻って日本が両大会で出走したのは鵜沢のみ。地力のある強豪国がリレーも本気で勝ちにきていることに対して、意識を高めることが求められる。
その上で決勝ではアクシデントも起きた。3走桐生がスタート直後に右脚をつって区間最下位。4走鵜沢へ渡る時点で勝負がついてしまった。
桐生の決勝に関する話ではないが、近年は脚をつる選手に加えて、レース後にすぐに靴を脱ぐ選手をよく見かける。21年東京五輪後に厚底スパイクが主流になり、脚への負担が大きいのだろう。各選手がそこにも対応しなければならない。
今大会はあらためて、世界を基準とする必要性を痛感させられた。「100メートルはレベルが高くなった」「力不足だった」ではなく、「これが今の世界のレベル」「これが今の力」と捉えなければならない。
日本選手は国内大会の予選を10秒1~2台でまとめる傾向があるが、それでは世界大会の予選でも同じようなタイムになってしまう。サニブラウン・ハキームや山縣亮太らが好調の時は、予選でも好タイムを出していた。今季は4人の日本人が10秒00以上を出したが、さらにタイム向上の可能性も十分にある。
いかに視線を世界基準に上げられるか。それがリレーでも、個人種目でも大切になると思う。
◆リレーのバトン渡し アンダーハンドパスは手のひらを下に向けた状態で、バトンを受ける。渡す方は下から上にバトンを振り上げて相手の手のひらに押しつける。両者が接近しないと渡せないがスピードを落とさずミスが少ない。オーバーハンドパスは互いの腕を伸ばすため距離を稼げるが、受け取る走者は加速しづらい。

