選手が消えた? スノーボード・スロープスタイル男子の予選、中継するテレビカメラが浜田海人の姿を見失ったのだ。2つ目のジブ(障害物)で通常のラインを通らず、横の壁を使ったトリックに成功。予想しない動きだけに、カメラも追いきれなかった。

スノーボード男子スロープスタイル予選2回目を終えボードを掲げる浜田(撮影・パオロ ヌッチ)
スノーボード男子スロープスタイル予選2回目を終えボードを掲げる浜田(撮影・パオロ ヌッチ)

12位で決勝に進出した浜田は「今日の練習で初めてできて、本番では2回とも成功できた。持ってるな、と思いました」と誰もやらないラインを滑って得意満面。「ディス・イズ・スノーボード。シーンを盛り上げるのに、いい感じでかませました」と話した。

スノーボードは自由だ。特にスロープスタイルは、どのジブやジャンプ台を使おうが、どう使おうが、すべて選手に任されている。何も決まりはない。いかに人がやらないこと、できないことをやるか。独創性が高得点のカギ。「カメラも追えなかった」は、彼らへの最大級の褒め言葉だ。

男子スロープスタイル予選、万里の長城をイメージしたコースを滑る浜田(撮影・垰建太)
男子スロープスタイル予選、万里の長城をイメージしたコースを滑る浜田(撮影・垰建太)

選手の行動も、他の競技とは違う。女子決勝、最終滑走者のサドフスキシノット(ニュージーランド)の大技が決まると、点数が出る前にメダルを争う他国の選手が祝福。劇的大逆転をした選手とされた選手が、1つになって喜んだ。

国は関係なく、個人が心から楽しむ。昨夏の東京五輪スケートボードでも見た光景だ。テレビでは「スケートボードのようですね」と言うが、スノーボードは以前から変わらない。スケボーと共通する「カルチャー」が、東京五輪で広く知られただけだ。

スノーボードの選手たちも、スケートボード勢の活躍が刺激になっている。男子予選を6位通過した大塚健は東京五輪スケボー代表の白井空良と仲良し。神奈川・光明相模原高の同級生で「五輪の話もしました」と言う。女子の村瀬心椛もスケボーの西村碧莉に「心構え」を聞いたという。

スケボーも、どこを滑ろうが、どの障害物を使おうが選手の自由。必要なのは独創性だ。「ナンバーワン」より「オンリーワン」を求める新しい価値観を共通して持つからこそ、スケーターとスノーボーダーは話が合うのかもしれない。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)

スノーボード男子スロープスタイル予選2回目で着地し喜ぶ浜田(撮影・パオロ ヌッチ)
スノーボード男子スロープスタイル予選2回目で着地し喜ぶ浜田(撮影・パオロ ヌッチ)