バドミントンの世界選手権が中国・南京で30日、開幕した。日本代表の朴柱奉(パク・ジュボン)監督が掲げる目標は、5種目で金2つを含む4つのメダル。女子シングルス昨年覇者の奥原希望(23=日本ユニシス)や、男子シングルスで3年ぶり出場の桃田賢斗(23=NTT東日本)ら世界屈指の戦力で目標達成を目指す。

毎食ともに食事し、チームワークを高めたバドミントン女子日本代表(味の素(株)「ビクトリープロジェクト」提供)
毎食ともに食事し、チームワークを高めたバドミントン女子日本代表(味の素(株)「ビクトリープロジェクト」提供)

 そんな彼らを支えているのが手作りのご飯、味の素社による「勝ち飯」のサポートだ。スタッフは、2カ月前に現地調査し、和食を作るための食料調達ルートを確保。大会期間は、日本から数名の調理スタッフが現地入りし、おにぎりやおかずを選手に届けている。海外に何日も滞在した時、無性に白米とみそ汁を食べたくなった経験はないだろうか。アスリートも同じだ。白米に、栄養たっぷりの汁物。さらにタンパク質や野菜を使った主菜と副菜。バランスの取れた「勝ち飯」は体だけでなく、心を整える効果もある。

バドミントン・トマス杯期間中にそろって食事をする男子日本代表。左が桃田賢斗、右が西本拳太(味の素(株)「ビクトリープロジェクト」提供)
バドミントン・トマス杯期間中にそろって食事をする男子日本代表。左が桃田賢斗、右が西本拳太(味の素(株)「ビクトリープロジェクト」提供)

 1年の約3分の2を海外で過ごすバドミントン日本代表にとって、食事は、これまでも重要な問題だった。女子シングルスの山口茜に聞いたことがあるが、海外遠征の際は「トラベルクッカー」などの調理器具を持参し、白米を炊くなど自炊するのが基本だという。だが、試合や練習の後で食事の用意をするのは大変で、作るものも限られる。そんな負担を軽減するべく、日本協会は昨年から競泳、フィギュアスケートなど五輪競技の支援に力を入れる味の素社にサポートを依頼。合宿での勉強会などを経て、5月のトマス・ユーバー杯では初めて現地での食事支援を受けた。

汁物をよそう女子シングルス山口茜(味の素(株)「ビクトリープロジェクト」提供)
汁物をよそう女子シングルス山口茜(味の素(株)「ビクトリープロジェクト」提供)

 同大会では、女子は毎食競泳選手並みの250~300グラムの白米をペロリ。毎食そろっての食事でチームワークもはかり、37年ぶりの優勝につなげた。男女ともに人気だったメニューは、キャベツと豚肉を甘辛く炒めた回鍋肉。根菜好きの奥原はかぼちゃの煮物を喜んで食べたという。今回の世界選手権は、だし入りのおにぎり「パワーボール」や、副菜に加え、夜には温めるだけの鍋の具材セットが支給されている。各選手は、ほぼ毎晩野菜300グラムと肉か魚介類100~200グラムの鍋を食べ、翌日の試合に備える。

 今年2月の平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)でも、味の素社から同様のサポートを受ける羽生結弦(23=ANA)が、食事でエネルギーを蓄えて、66年ぶりの五輪2連覇を達成した。もともと食の細かった羽生が筋力を増やし、スタミナ強化に成功したのも同社の細かなサポートがあったおかげだった。フィギュアスケート担当でもある私は、羽生に提供されたのと同様のだし入りのおにぎり「パワーボール」や、弁当を海外の大会中に何度か試食させてもらったことがあるが、いつも大変おいしく、心も癒やされる。

 男子ダブルスで金メダルを狙う嘉村健士(28=トナミ運輸)は「より体への意識が強くなり、コンディションも良くなった」とサポートの効果を実感する。これまでになく充実した食事を味方に、日本バドミントン界史上最高の結果を期待したい。【高場泉穂】

 ◆高場泉穂(たかば・みずほ)1983年(昭58)6月8日、福島県生まれ。東京芸術大を卒業後、08年入社。整理部、東北総局を経て、15年11月から五輪競技を担当。