アーティスティックスイミング(AS)の「第98回日本選手権」が5月1~3日、東京辰巳国際水泳場で行われる。6月のブダペスト世界選手権に向けて新生した日本代表マーメイドジャパンがオープン参加する中、若さあふれる次代の有望選手たちが水中の美を競う。最大の注目は2年連続の4冠獲得が期待される和田彩未(あみ、18=長野ASC)。ソロテクニカル(T)とフリー(F)に加え、小林唄(19)と組むデュエットTとFでも優勝候補筆頭の呼び声が高い。

世界での巻き返しには“若手の成長”が必須

前回のソロテクニカルで優勝した和田彩未
前回のソロテクニカルで優勝した和田彩未

昨夏の東京五輪では技術の高さをみせながらも、デュエット、チームとも4位に終わったマーメイドジャパン。22、23年世界選手権、24年パリ五輪と続く「世界」での巻き返しを図るには若手の成長が欠かせない。日本水泳連盟・本間三和子AS委員長は、昨年に開催できなかった世界ジュニア選手権の“幻”の日本代表で、パリ五輪での代表入りが待たれる和田の日本選手権での泳ぎに期待を寄せる。「繊細な表現と正確な技術がある。昨年の秋以降、(22年世界選手権)選考会に出場してこなかったが、どのような演技を見せるのか楽しみ」と話し、そのルーティン力によるソロ優勝が濃厚とした。

ライバルは技術力の高い広田

ソロで和田との優勝争いが期待される広田樹
ソロで和田との優勝争いが期待される広田樹

ライバルと見られるのは広田樹(20=井村ASC)。ナショナルB代表で、1月23日に横浜国際プールで行われた「ナショナルトライアル2022」では、和田をわずかに抑えて第1位となった。ソロ、デュエット、チームの規定要素で争い、230・5640を獲得、2位和田の229・2337を上回った。本間委員長は「技術力が高い。ハイブリッドフィギュアのディフィカルティーが良い。和田選手をどこまでおびやかすか」とその成長を見守る。

昨年のデュエットテクニカルで息の合った演技を見せる和田彩未(左)と小林唄
昨年のデュエットテクニカルで息の合った演技を
見せる和田彩未(左)と小林唄

大会の華デュエットは、長野ASCの和田・小林組の優勝が有力と見られる。本間委員長は「芸術性に富んだ構成で、創造性も技術も高い。テクニカルもフリーも昨年はダントツ優勝だったので、今年も大いに期待される」と評した。同委員長がほかに注目するのは3組。ミキハウス東京ASCの稲富愛佳(18)内田桜子(17)組には「バネとキレのある演技に期待している」、アクラブ調布の鈴木深結(22)渡辺夢乃(21)組には「クリエーティブな演技を見せてくれるだろう」と、それぞれレベルアップを求めた。13-15歳大会デュエット優勝で8月米国開催の世界ユース代表、井村ASCの三橋理沙子(13)松本レナ(14)組には「13-15歳大会では抜きんでた技術を見せていたが、今回どこまで戦えるか見てみたい」とジャンプアップに期待した。

団体4種目のチームTとF、FC、Hでは、今年も井村ASC(A)の力が群を抜いている。本間委員長は「井村ASCは上の選手が抜けても、手堅い演技をしてくる」と舌を巻くとともに、実力者を擁すミキハウス東京ASCやアクラブ調布、長野ASC、京都踏水会水泳学園がどこまで迫れるかを見つめる。そして、同委員長は「今夏、世界ジュニア選手権、世界ユース選手権遠征予定の代表選手たちが今大会はそれぞれの所属クラブで出場する。お互いにしのぎを削って成長してくれることを楽しみにしている」。

メダル期待のデュエットテクニカル 14歳比嘉が抜てき

世界ジュニア選手権代表の<br>佐藤陽太郎(左)と岩崎尽真
スピード感のある練習を見せる新ASデュエット日本代表の吉田萌(手前)と比嘉もえ

6月の世界選手権で複数メダルを狙う新生日本代表の中で最も注目されるのはデュエットテクニカル。東京五輪代表の吉田萌(26、ザ、クラブピア・88)が14歳の新代表、比嘉もえ(広島市立観音中3年、AS広島)と組んで泳ぐ。当初は吉田と安永真白(22、井村ASC)でテクニカル、フリーに出場予定だったが、安永が2月に膝を手術、比嘉が抜てきされた。元広島東洋カープ選手の寿光さんを父に持ち、171センチの長身が武器。中島貴子ヘッドコーチは「世界でもトップクラスの高さを出し、その華やかなスター性も出していきたい」と期待する。本人も「目標はメダルを取ること」と6月に向け、厳しい練習に取り組んでいる。

男子は10人がエントリー

佐藤陽太郎のライバル岩崎尽真
佐藤陽太郎のライバル岩崎尽真

忘れてならないのが男子選手。今回ミックス(混合)デュエット日本代表となった佐藤陽太郎(17)が姉・友花(20)と組んでデュエットにオープン参加するほか、陽太郎のライバル岩崎尽真(18、国士舘ASC)はソロ2種目と団体4種目に参加する。今大会にはこの2人を含む男子10人がエントリー。女子中心だったASへの男子の進出が進む。世界ではワールドシリーズで男子ソロが正式種目になるなど、日本もこの流れに乗り遅れる訳にはいかない。本間委員長は「男子の活躍の場が増えている。女子と同様に力をつけていってもらいたい」と佐藤、岩崎に続く選手を思い描いた。

【大会ガイド】

◆競技予定
・5月1日(日)フリーコンビネーション、ソロテクニカル、ハイライト
・5月2日(月)チームテクニカル、デュエットテクニカル、ソロフリー
・5月3日(火・祝)チームフリー、デュエットフリー
=各日午前9時55分競技開始
◆観戦方法
一般無観客開催のため、大会の模様は日本水泳連盟公式サイトでLIVE配信
日本水泳連盟公式サイト「AS」ページ
<主催>日本水泳連盟<主管>東京都水泳協会<後援>日刊スポーツ新聞社、上月財団<特別協賛>ヤクルト本社<協賛>GMOクリック証券、ブルボン、味の素、東京海上日動火災保険、東京海上日動あんしん生命保険、ニコン、ニップン、コーセー、日本航空、セイコーホールディングス、アシックスジャパン、ミズノ、デサントジャパン、オーエンス、サントリーフラワーズ、タキロンマテックス、バカラ パシフィック<協力>鈴乃屋