女子レスリングの伊調馨(32=ALSOK)が「着物」をねだった。政府は13日の閣議で、リオデジャネイロ大会の金メダルで女子個人種目初の五輪4連覇を果たした伊調への国民栄誉賞授与を決定した。東京都内で会見した伊調は記念品の希望を聞かれ「和装の文化を伝えたい」と「お着物」を挙げた。これまで競技だけを追求してきた国民栄誉賞レスラーは今後、レスリングの普及と発展にも力を入れることを誓った。

 レスリングに真摯(しんし)に取り組んできた伊調が、珍しく「おねだり」をした。記念品として「世界に出ていく機会も増えるので、日本人女性としてお着物だったり。和装の文化を伝えていきたいので、ちょっとおねだりできたらいいなと思います」。実は、女子レスリング界でも服装のセンスはピカ一。「私には似合わない」と話していた賞の受賞が決まって、思わず「発信」したようだ。

 12年に国民栄誉賞に輝いた吉田と比較されてきた。圧倒的な発信力で人気者になった吉田に対し、求道者のごとく競技に打ち込んだ。「テレビや新聞などマスコミさんが苦手で、普及や発展に尽力できていなかった」と振り返った。表に出るのは吉田に任せっきり。「沙保里さんがいなければ、こうやってレスリングに取り組めなかった」と言った。

 しかし、吉田に続く受賞で、これまで通りにはいかないことも覚悟した。まだまだ女子レスリングがメジャースポーツでないことも理解している。だからこそ「レスリングの価値を上げていかないと。マイナーからメジャーになるように頑張りたい」と話した。同じ受賞でも「沙保里さんと同等とは思わない。尊敬する先輩として、見習わないといけない」と、積極的に表に出ることも誓った。

 選手として、指導者として、今後について夢も語った。「東京でやる五輪に挑戦できるかもしれない」と言いながらも「指導者として子どもからシニアまで世代を問わずに教えたい」と自身の経験を伝えていくことにも意欲をみせた。ケガをしている肩や首の状態がひどく「しばらくは休みたい」と話したが「まだレスリング人生は半分。今の時点では50点ぐらい」と、国民栄誉賞レスラーとしてさらなる進化を目指した。【荻島弘一】

 ◆国民栄誉賞の記念品 表彰規程には「表彰状及び盾、記念品または金一封を添えることができる」とある。過去はすべて記念品が贈呈されており、第1号の王貞治氏は「鷲(ワシ)の剥製」だった。最近では、なでしこジャパンの選手とスタッフに「熊野筆の化粧筆」、吉田沙保里に「金真珠のネックレス」、元横綱大鵬の故納谷幸喜氏に「ダイヤ8個を埋め込んだ掛け時計」、長嶋茂雄氏と松井秀喜氏に「金色のバット」が贈られている。