完璧を求めすぎて、わざわざ自分の悪いところを見つけてきて、不安になり、リズムを乱す。萩野は「どうしても僕は弱い人間なので」と嘆いたこともある。

 衝撃的な光景もあった。銀翌日の800メートルリレー。萩野が出遅れて5位。険しい表情で戻ると、瀬戸に抱き寄せられ「公介(萩野)笑えよ。結果を気にせず、笑顔のほうがいいよ」とねぎらわれた。その言葉に両手両足をついて泣き崩れた。「びっくりした」と瀬戸。萩野は「正直、迷惑をかけたし、いろいろふがいない」。

 北島氏 0か100かしかないから、そうなっちゃう。でもね、人間らしいところもあるんだよ。悪いことじゃない。(あの時に)いい意味で前向きに感情表現ができた。もう少し肩の力を抜いてやりゃいい。

 日本は6年ぶりに金メダルなし。平井監督は「自己記録は同じでも、海外勢と比べて大人と子どもが泳いでいるようだ」と、チームに精神的な強さを求めた。

 萩野は泣き崩れた後、仲間に「まだレースが残っている」と声をかけられ、最終種目に臨んだ。「自己コントロールができなかった。未熟な部分が見えて、一番有意義な試合だったと思う。おのれに打ち勝つ。平井先生から『克己心』という言葉をもらった。(金の)ケイリシュが遠くにいっているとは思ってない。絶対勝てると思っている」。涙をさらけ出し、仲間に支えられ、復活を目指す。【益田一弘】